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JR北海道の赤字8区間、国主導の協議が始動 「地域の足と物流を守れ」か「赤字は限界」か

JR北海道が「単独では維持困難」とする赤字8区間(黄線区)のあり方を話し合う協議会が10月9日、国と北海道の主導で初めて開かれました。鉄道の維持に国の責任を求める沿線自治体と、赤字の拡大を前に費用負担を含む抜本策を求める国・JR側の主張をまとめました。

JR石北線を走る列車と湧別川
JR石北線(北海道)写真:MaedaAkihiko / Wikimedia Commons(CC0)

この記事のポイント

  • JR北海道が「単独では維持困難」とする8区間(輸送密度が1日200人以上2000人未満の「黄線区」)の今後を話し合う協議会が10月9日、北海道運輸局と北海道庁の主催で初めて開かれ、沿線51市町村が参加しました。
  • 8区間の営業赤字は2025年度に計約155億円で、拡大が続いています。黄線区は計925キロで、JR北海道の営業区間の約4割を占めます。
  • JR北海道は春に、自治体が線路などを保有する「上下分離」を含む4項目を示しましたが、自治体の反発を受けて9月に撤回し、国が主体的に関わる協議会の設置を表明しました。
  • 国土交通省は、2026年度末までとしていた改善策の取りまとめ期限にこだわらず協議を続ける一方、自治体には費用負担も念頭に「踏み込んだ検討」を求めました。

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① 何が起きているのか

黄線区の8区間

路線 区間
宗谷線 名寄〜稚内
石北線 新旭川〜網走
釧網線 東釧路〜網走
根室線(花咲線) 釧路〜根室
根室線 滝川〜富良野
富良野線 富良野〜旭川
室蘭線 沼ノ端〜岩見沢
日高線 苫小牧〜鵡川
  • 「黄線区」は、1キロあたりの1日平均の利用者(輸送密度)が200人以上2000人未満の区間です。
  • 2016年に公表した13区間のうち、利用がさらに少ない5区間(赤線区)は、2026年3月までにすべて廃止されました。

初会合のポイント(10月9日)

  • 主催は北海道運輸局と北海道庁。座長は北海道大学大学院の岸邦宏教授。沿線51市町村が参加
  • 全体の協議会と、区間ごとの作業部会の二段構えで進める
  • 国は、上下分離は協議の場で扱わないと約束し、改善策の取りまとめ期限(2026年度末)にもこだわらない姿勢を示した

これまでの流れ

時期 出来事
2016年11月 JR北海道が「単独では維持困難」な13区間を公表
2024年3月 国が2024〜2026年度に1092億円の支援を決定。2026年度末までに区間ごとの抜本的な改善策を求める監督命令
2026年4月 JRが上下分離を含む4項目を提示
9月16日 JRが上下分離を撤回し、国主導の協議会設置を表明
10月9日 協議会が初会合
月内 区間ごとの作業部会での協議を開始予定

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

鉄道の維持・国の責任を求める立場の意見

  1. JRと沿線自治体との信頼関係が揺らいでいます。JRには地元の声を聞いてほしい。国・道・JR・自治体が共通認識を持って、幅広く議論を深める必要があります(鈴木直道・北海道知事)。沿線としてできることはしたうえで、最終的な鉄路の維持には国と道が責任を持つべきです(松野哲・岩見沢市長)。

  2. 鉄道は損得で語るものではなく、北海道の大切な財産です(辻直孝・北見市長)。国と道は、存続の意思をはっきり示してほしい(北猛俊・富良野市長)。線路などのインフラは公的に支え、JRは運行とサービスに専念するべきだとの見方もあります(関西大学の宇都宮浄人教授)。

  3. 国はJR北海道の唯一の株主として責任を持つべきで、協議会を廃線の準備の場にしてはなりません。作業部会が3回程度では「結論ありき」になりかねません。農産物を運ぶ「食料基地」や、国境地域を抱える北海道ならではの視点も必要です(北海道新聞)。

抜本的な見直しを求める立場の意見

  1. 何も手を打たなければ利用者の減少と赤字の拡大が続き、公共交通そのものの継続がいずれ難しくなります。監督命令を出した当時と比べても、十分な成果は上がっていません。期限ありきで結論を急ぐことはしませんが、自治体には費用負担も念頭に踏み込んだ検討をお願いしたい(国土交通省の田口芳郎審議官)。

  2. JR北海道は2016年、利用の少ない区間の維持は「事業として担えるレベルを超えている」として、単独で維持困難な13区間を公表しました。全線区の営業赤字は2025年度に561億円と12年連続で、8区間の赤字も前年度から7億円拡大しています。経営の厳しさから、改善策は「待ったなし」の状況です。

「鉄道かバスか」の二択にしない考え方

  1. 鉄道を残すかバスなどに切り替えるかで対立するのではなく、地域にとって最適な交通の形を探るべきで、結論は一択ではない、という考え方も示されています(国の検討会で座長を務めた東京女子大学の竹内健蔵教授)。国も、黄線区の支援に使える既存の予算で十分活用されていない部分があるとして、活用できる提案があれば積極的に支援するとしています。

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

国土交通省

「期限の延長」は誰のための猶予か

推測国は監督命令で、2026年度末までに区間ごとの抜本的な改善策をまとめるよう求めていましたが、初会合では期限にこだわらない姿勢を示しました。来春には知事選を含む統一地方選も控えています。地域の反発が強いなかで結論を急げば、廃線の議論が政治問題になりかねず、時間をかけて合意を探る方が得策だと判断したのかもしれません。

推測のもとにした事実

  • ・国交省は、抜本的な改善方策の策定期限を、地域でさらに議論が必要なら延ばす考えを示した北海道新聞(10/9)
  • ・鈴木知事は3選への出馬の意向を固めたと報じられている(本人は「現時点で何も決めていない」と説明)北海道新聞(10/9)

JR北海道

「上下分離」撤回で、国を前面に引き出した?

推測JRは春に、自治体が線路などを持つ「上下分離」を示しましたが、反発を受けて撤回し、国が主体的に関わる協議会を求めました。自社だけで自治体と交渉しても行き詰まるなかで、唯一の株主である国を協議の前面に立たせることで、支援の継続や費用負担の議論を有利に進めたい思惑があるのかもしれません。国の3年間の支援は2026年度で区切りを迎えます。

推測のもとにした事実

北海道・沿線自治体

「費用負担」をどこまで背負うか

推測国が自治体に費用負担の検討を求めるなか、沿線の首長は「最終的には国と道の責任」と繰り返しています。人口減少で財政に余裕のない市町村にとって、赤字の穴埋めを引き受けることは難しく、存続を求めつつも負担は国に、という立場を崩せない事情がうかがえます。

推測のもとにした事実

世の中の声

世論調査

SNSの反応

鉄道の維持・国の責任を求める立場寄りの声

  • バスにすれば線路の維持費がいらなくなると言うけれど、道路にも維持費はかかる。ある程度の利用がある区間なら、鉄道のほうが大量輸送に向いていると思う

  • 赤字の黄色線区ばかりが議論されるのは違和感がある。北海道新幹線も大きな赤字なのに、同じように問われていない

抜本的な見直しを求める立場寄りの声

  • 国鉄時代に巨額の赤字を抱え、多くの路線を廃止した歴史を忘れてはいけない。採算の取れない路線を残し続けるのには限界があると思う

その他の声

  • 赤字ローカル線の協議会は、利用促進策を話し合いながら、結局は時間切れで存続をあきらめさせる場になりがちだと感じる。今回は本当に中身のある議論をしてほしい

集め方:X(旧Twitter)で「JR北海道」×「赤字 OR 廃線 OR 線区 OR バス転換 OR 協議」(いいね50件以上・話題順)、「黄色線区 OR 黄線区」×「残す OR 廃止 OR 物流 OR バス」(いいね30件以上)、全国のローカル線をめぐる「ローカル線 OR 赤字路線」×「維持費 OR 存続 OR バス」(いいね100件以上)で検索し、2026年8月中旬〜10月10日の日本語投稿を確認しました。報道を紹介する投稿が中心で、北海道に限らない一般論の投稿も含めて紹介しています
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 赤字が拡大しており、何らかの改善策が必要なこと
  • 国・道・JR・自治体が一緒に議論する必要があること
  • 上下分離は今回の協議では扱わないこと(JRが撤回し、国も扱わないと約束)

意見が分かれている点

  • 鉄道として残すべきか、バスなど別の交通に切り替えることも含めて考えるべきか
  • 赤字や維持費を、国・道・自治体・JRがどう分担するか
  • 物流や安全保障など、採算以外の価値をどこまで重く見るか

今後の注目点

  • 月内にも始まる区間ごとの作業部会での議論
  • 2027年度以降の国の支援の枠組み
  • 2027年春の北海道知事選など統一地方選と、議論の行方

赤字が拡大しており、関係者がそろって改善策を探る必要があるという点では、各立場の考えに重なりがあります。対立の中心は、鉄道として残すことを前提にするのか、別の交通手段も含めて考えるのか、そして誰がその費用を負担するのかです。 沿線自治体は国と道の責任を強く求め、国やJRは赤字の拡大を前に、地域にも踏み込んだ検討を求めています。区間ごとの作業部会で、地域ごとにどんな答えが出るかが注目されます。

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