古川デジタル相「自分で守る」発言 会見全文と「1.6億人分」の中身を検証
企業への不正アクセスで個人情報の流出が相次ぐなか、古川俊治デジタル相が会見で「自分の情報は自分で守る」と呼びかけ、「責任転嫁だ」と批判が広がりました。デジタル庁が公開した会見の要旨で実際の言葉と文脈を確かめ、「1.6億人分の流出」「犯人は野放し」といった話の根拠も整理しました。呼びかけを妥当とみる立場と、国や企業の責任をぼかしているとみる立場の見方をまとめています。
結論:広がっている話は本当?
- 不正確「デジタル相が会見で『自分の情報は自分で守って』と言った」デジタル庁の会見要旨では「『自分の情報は自分で守る』この意識を持って、被害の防止に向けた取組への御理解と御協力を」という言い方です。パスワードの使い回しをやめる、多要素認証を使う、不審なメールやSMSに注意する、という3つの対策を挙げた後の締めの言葉で、「守って」という命令の形は時事通信の見出しの表現です
- 誤り「デジタル相は『自衛しろ、国は責任を取らない』と言った」会見では「サイバー攻撃は、企業や組織だけの問題ではございません」と述べたうえで、質疑では「企業の皆さん、そして個人の皆さんに基本的な安全対策」を求め、国も関係省庁や被害企業と連携すると答えています。国が責任を負わないという発言はありません。3日後の会見では、事業者向けの注意喚起も出すと表明しました
- 不正確「個人情報の流出は1.6億人分にのぼる」セキュリティー会社マクニカのまとめでは、2026年に漏えいした「可能性がある」個人情報が「のべ」1億6500万人分余りです。同じ人が複数のサービスで重複して数えられており、1.6億の別々の人の情報が漏れたという意味ではありません。JNNのまとめの「1億6000万件」も、4週間に発表された件数の「のべ」です
- 不正確「犯人は一人も捕まっていない(野放し)」9月下旬からの一連の大量流出では、10月26日時点で容疑者の逮捕は報じられておらず、警察庁長官は「背景や相互の関連性は明らかではない」として捜査を進めるとしています。一方、ほかのサイバー攻撃では、快活CLUBへの攻撃で少年らが逮捕され、ランサムウェア集団「Qilin」の中心メンバーも日本で拘束されてドイツで逮捕されています

古川デジタル相の「自分の情報は自分で守る」は責任転嫁なのか
- 大臣が国民に求めた対策
- 3つ
- 2026年に漏えいの可能性がある個人情報(マクニカ調べ)
- のべ1億6500万人分余
- 1〜9月に公表された流出事案(MM総研調べ)
- 454件
呼びかけは妥当
情報が漏れた後の二次被害は、個人の対策で防げる部分がある。呼びかけは妥当
責任転嫁だ
漏らしたのは企業や行政。国と企業の責任を先に語るべきで、個人に向けるのは筋違い
- どちらも認めていること
- 流出した情報を悪用されないために、パスワードの使い回しをやめるなどの対策は役に立つこと
- 次の焦点
- 政府が来週中にまとめる「緊急対策パッケージ」が、企業への義務づけや捜査の強化にどこまで踏み込むか
この記事のポイント
- 古川俊治デジタル相は10月6日の会見で、企業への不正アクセスによる個人情報の流出が相次いでいることを受け、パスワードの使い回しをやめるなど3つの対策を国民に呼びかけ、「『自分の情報は自分で守る』この意識を持って」と締めくくりました。
- 時事通信が「自分の情報は自分で守って」という見出しで報じると、SNSで「責任転嫁だ」などの批判が広がりました。一方、会見の全体を見ると、企業の対策や国の取り組みにも触れていたと指摘する記事も出ています。
- 「1.6億人分の流出」は、漏えいの「可能性」がある情報を「のべ」で数えた民間のまとめで、重複を含みます。
- 一連の大量流出では容疑者の逮捕は報じられていませんが、警察は捜査を進めています。政府は10月1日に能動的サイバー防御の運用を始め、10月26日には初めての関係閣僚会議を開き、高市首相が来週中をめどに「緊急対策パッケージ」をまとめるよう指示しました。
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読者アンケート・回答 件※ 統計的な世論調査ではありません。
① 何が起きているのか
広がっている話を整理すると
| 広がっている話 | 確認できたこと |
|---|---|
| 大臣が「自分の情報は自分で守って」と言った | 会見要旨では「『自分の情報は自分で守る』この意識を持って」。3つの対策を挙げた後の締めの言葉です |
| 国は責任を取らないと言った | そうした発言はありません。企業と個人に対策を求め、国も関係省庁や被害企業と連携するとしています |
| 1.6億人分が流出した | 漏えいの「可能性」がある情報を「のべ」で数えた民間のまとめです。重複を含みます |
| 犯人は一人も捕まっていない | 一連の大量流出では逮捕は報じられていません。ほかのサイバー攻撃では逮捕の例があります |
会見で大臣が言ったこと(10月6日)
デジタル庁が公開した会見要旨から、流れを整理します。
- 企業や行政機関への不正アクセスで、ID・パスワードやクレジットカード情報、運転免許証などが流出する事案が起きている
- なりすましや不正送金、詐欺などの二次被害のおそれがある。サイバー攻撃は「企業や組織だけの問題ではございません」
- 国民に3つの対策を求める:パスワードの使い回しをやめる/多要素認証を使う/不審なメールやSMSに注意する
- 「『自分の情報は自分で守る』この意識を持って、被害の防止に向けた取組への御理解と御協力を」
質疑では、企業への対応を問われ、「企業の皆さん、そして個人の皆さんに基本的な安全対策」の徹底を求め、国もNCO(国家サイバー統括室)を中心に関係省庁や被害企業と連携すると答えています。
10月9日の会見では、古川氏はサイバー安全保障担当相・個人情報保護委員会の担当相として、事業者に脆弱性対策や多要素認証、委託先を含めた対策の強化を求める注意喚起を出すと表明しました。
「1.6億」は何の数字か
| 数字 | 出どころ | 中身 |
|---|---|---|
| のべ1億6500万人分余 | セキュリティー会社マクニカのまとめ(NHK、10月16日) | 2026年に漏えいした「可能性がある」個人情報 |
| のべ1億6000万件超 | JNNのまとめ(10月21日) | 10月21日までの4週間に発表された漏えいの件数 |
| 454件 | MM総研のまとめ | 1〜9月に公表された、サイバー攻撃による流出の事案数 |
どれも、同じ人が複数のサービスで数えられる「のべ」の数字です。また、「可能性」の段階の数字は、調査が進むと減ることがあります。たとえばニフティは当初「最大54万件」としていましたが、続報で「最大1万8000件」に絞り込みました。
主な流出の発表(9〜10月)
- タイムズカー:免許証などの画像は当初約160万件のおそれ、その後外部送信の痕跡は約146万件と発表
- ヤマト運輸:「クロネコ代金後払いサービス」の利用者など530万件余
- ふるさとチョイス:約445万件
- カプコン:会員サービスの1177万件
- 全国22府県警:警察官らの情報
- GMOインターネット:FX向けサービスで顧客の情報が持ち出され、身に覚えのない取引の訴えも
- デジタル庁:各府省共通のシステムで政府職員ら24万6000人分(9月発表)
捜査と政府の対策
- 警察庁の楠芳伸長官は10月16日、一連の流出について「現時点で事案の背景や相互の関連性は明らかではない」としたうえで、捜査を進めて実態解明を急ぐとしました
- 10月1日、サイバー対処能力強化法の施行で「能動的サイバー防御」の運用が始まりました。GMOは政府にこの措置を使うよう要請しています
- 自民党は10月20日、官邸主導の「サイバー対処本部」の設置を求める提言をまとめました
- 政府は10月26日、サイバーセキュリティーの関係閣僚会議の初会合を開きました。高市首相は来週中をめどに「緊急対策パッケージ」をまとめる方針を示し、財政措置も含めて対策を急ぐよう各大臣に指示しました。被害企業への相談・支援の拡充や、高性能AIを使った政府システムの脆弱性チェックの前倒しも盛り込まれ、古川氏はサイバー安全保障担当相として攻撃主体の特定などの調整役を担います(ITmedia NEWS)
出典
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
呼びかけは妥当の意見
古川氏は、流出した情報がなりすましや不正送金、詐欺などの二次被害につながるおそれがあるとして、パスワードの使い回しをやめる、多要素認証を使う、不審なメールやSMSのリンクを安易に開かない、の3点を求めました。基本的な対策を徹底すれば「多くの被害は防ぐことができます」と説明しています。
フリーランス記者の岡田有花氏は会見動画を全部見たうえで、大臣は企業や組織の問題であることを前提に、個人にできる二次被害の対策を挙げていたと指摘しました。企業から漏れた情報まで「自分で守れ」と言われたように読める見出しは、刺激的すぎたのではないかとしています。
内外タイムスは、質疑で大臣が「企業の皆さん」を先に挙げ、国も関係省庁や被害企業と連携するとしていたことから、発言は企業や行政の責任を個人に移す趣旨ではなかったと報じました。言論サイト「アゴラ」のコラムも、時事通信の見出しは読者を誤解させるものだと批判しています。
ネットリテラシーの専門家で国際大学GLOCOM客員研究員の小木曽健氏は、女性自身の取材に「別に間違ったことは言っていないです」と答えました。そのうえで、国の行政や自治体のシステムのセキュリティを高めるよう働きかけるのは政府の仕事だとも述べています。
責任転嫁だの意見
岡田氏の記事によると、発言が報じられた後、SNSでは「個人への責任転嫁」「企業に預けた情報を抜かれたら個人には防ぎようがない」「漏らさない仕組みを作るのが企業と行政の責任」といった批判が相次ぎました。岡田氏自身も、会見では国が漏えい元の企業にどう動くのか、具体的な話は出なかったと指摘しています。
立命館大学の上原哲太郎教授は女性自身の取材に、日本企業はセキュリティを安い外注に頼りがちで、それが被害を広げていると指摘しました。国家サイバー統括室の役割は一部の重要な企業との情報共有などにとどまり、一般の民間企業のセキュリティには口出しできないとして、「基本的にセキュリティ対策は企業努力、というのが日本政府の立ち位置」だと述べています。
9月にはデジタル庁自身が運用する各府省共通のシステムに不正アクセスがあり、政府職員らの個人情報24万6000人分が漏えいした可能性があると発表されています。国のシステムも守り切れていないのに、個人に自衛を求めるのはおかしいという受け止めにつながっています。
大臣の権限という見方
政治コラムニストの辻雅之氏は、サイバー対策を担うのはデジタル庁ではなく国家サイバー統括室(NCO)で、デジタル大臣の権限も他の省庁への勧告などにとどまると解説しました。発言への批判の背景には、サイバー対策の司令塔が見えにくい政府の体制の問題があるとしています。
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
古川デジタル相・政府
なぜ最初に「国民への呼びかけ」から始めたのか
推測民間企業のシステムの安全対策に国が直接手を出せる範囲は限られており、すぐに打てる手として、流出後の二次被害を減らす個人向けの対策を先に示したとみられます。実際、3日後の会見では事業者向けの注意喚起も出しており、個人向けと事業者向けを順に打ち出す段取りだった可能性があります。ただ、その順番と短い言葉が、「国より先に個人に責任を求めた」という印象を生んだようです。
推測のもとにした事実
- ・10月9日、古川氏は「まずは二次被害を防止する観点から」国民向けの事項を示したと説明し、事業者に脆弱性対策や多要素認証などの強化を求める注意喚起を出すとしたデジタル庁(古川大臣記者会見 令和8年10月9日 要旨)(10/9)
- ・デジタル大臣の権限は勧告などにとどまり、サイバー対策の担当は国家サイバー統括室Yahoo!ニュース エキスパート 辻雅之(発言の背景にある、サイバー担当大臣の"限られた権限")(10/9)
批判する側
なぜここまで強い反発が広がったのか
推測タイムズカー、ヤマト運輸、カプコンなど身近なサービスで流出が次々に発表され、利用者には防ぎようのない被害が続いていました。9月にはデジタル庁自身のシステムからも情報が漏れた可能性が発表されており、政府への不信が積み重なっていたところに、「自分で守って」という見出しが届いたことで、反発が大きくなったとみられます。
推測のもとにした事実
- ・デジタル庁のシステムへの不正アクセスで、政府職員ら24万6000人分の個人情報が漏えいした可能性時事ドットコム(個人情報24.6万人分漏えいか デジタル庁運用システムに不正アクセス)(9/11)
- ・時事通信は「自分の情報は自分で守って」という見出しで報じ、その後SNSで批判が広がった時事ドットコム(不正アクセス頻発「自分の情報は自分で守って」 古川デジタル相)(10/6)Yahoo!ニュース エキスパート 岡田有花(「自分の情報は自分で守って」デジタル相発言に批判殺到 「責任転嫁」なのか?)(10/7)
世の中の声
SNSの反応
呼びかけは妥当寄りの声
時事通信の見出しは切り取りで、大臣は「という意識を持って協力してほしい」と当たり前のことを言っただけだと思う
自分でできる対策を具体的に挙げていて、呼びかけとしては当然の内容だと思う
ふつうの呼びかけが投げやりな発言のように切り取られて、大臣も大変だと思う
責任転嫁だ寄りの声
企業に預けた情報を抜かれたら、個人ではどうしようもないと思う
企業も守れないのに個人に守れというのはおかしい、国は守ってくれないのかと思う
自分で守れと言うなら、何のためのデジタル庁なのかと思う
その他の声
切り取りではあっても、デマとまでは言えないと思う。企業が必要もないのに免許証などを保存して漏らしたら自分では守りようがないので、不要な情報を集めさせない仕組みが先だと思う
風邪予防に手洗いうがいをしろ、くらいの当たり前の話で、大臣が言うほどのことではないと思う
集め方:X(旧Twitter)で「自分で守る デジタル相」「古川 デジタル 切り取り」などで検索した2026年10月6〜26日の日本語投稿と、報道(岡田有花氏の記事、週刊女性PRIME、内外タイムス、女性自身)が紹介したSNSの投稿を要約しました。批判的な投稿が多い一方、時事通信の見出しを「切り取り」とみて大臣の発言を擁護する投稿も一定の反応を集めていました
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- パスワードの使い回しをやめる、多要素認証を使うといった対策は、流出後の二次被害を減らすのに役立つこと
- 企業や行政のシステムから漏れた情報そのものは、個人では守れないこと
意見が分かれている点
- 大臣が、国や企業の責任より先に個人の心構えを強調したのは適切だったのか
- 民間企業のセキュリティ対策に、国がどこまで義務を課すべきか
今後の注目点
- 来週中にまとまる「緊急対策パッケージ」の中身と、自民党が求める官邸主導の「サイバー対処本部」の行方
- 一連の大量流出について、警察の捜査で攻撃者が特定されるか
- 能動的サイバー防御が、基幹インフラ以外の企業への攻撃にも使われるか
古川デジタル相は、3つの具体的な対策を挙げたうえで「『自分の情報は自分で守る』この意識を持って」と協力を呼びかけました。「守って」という命令の形は見出しの表現で、国が責任を負わないという発言もありません。一方で、会見では国が企業にどう対応するのかの具体策は示されませんでした。「1.6億人分」は重複を含む「のべ」の数字で、一連の流出では逮捕者はまだ報じられていませんが、ほかのサイバー攻撃では逮捕の例があります。 呼びかけを妥当とみる立場は、流出後の二次被害は個人の対策で減らせると考えます。責任転嫁だとみる立場は、漏らしたのは企業や行政で、国がまず対策と責任を示すべきだと考えています。
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※ 記事を読んだ方が自由に答える読者アンケートで、統計的な世論調査ではありません。当サイトとしての賛否を示すものでもありません。
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