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選挙SNS偽情報、総務省が指針案 収益化停止は「推奨」で削除は求めず

総務省は10月23日、選挙中のSNSでの偽情報や誹謗中傷への対策として、大規模なSNS事業者13社向けの指針案を公表しました。偽情報を含む投稿の収益化停止やAI生成画像の検知・警告表示などを例示し、来春の統一地方選から適用されます。SNSでは「政府による言論統制だ」という声も出ています。指針案の原文で何が書かれているかを確かめ、対策を強めるべきだとする立場と、表現の自由への影響を心配する立場の見方をまとめました。

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結論:広がっている話は本当?

  • 誤り「政府がSNSの投稿を検閲し、削除させる」指針案は「表現の自由に最大限配慮する観点から、大規模事業者に対し個別の情報の削除を求めるものではない」と明記しています。個別の投稿が偽情報かどうかを判断する義務も、事業者に課していません
  • 誤り「役所が、収益化を止める動画を一つずつ決める」収益化停止は事業者に「推奨」される措置の一つです。どの措置を実施するか、どの投稿が「選挙の公正を害するおそれ」に当たるかは事業者が判断するとしており、総務省が個別の投稿を指定する仕組みはありません
  • 不正確「SNS事業者は収益化停止を義務付けられる」法律で義務付けられたのは、偽情報などの悪影響を減らす何らかの措置を講じることと、その実施状況を年1回公表することです。収益化停止は9項目の例示の一つで、指針案は「全ての措置の実施を義務付けるものではない」としています
  • 不正確「対策をしないSNS事業者には最大1億円の罰金が科される」どんな措置を取るかについては、行政処分も罰則もありません。1億円以下の罰金があるのは、実施状況の公表義務に違反して総務大臣の勧告・命令を受け、その命令にも従わなかった場合の法人への罰則です
  • 事実「対象はSNSなど大手のネット事業者で、新聞やテレビは対象外」指針の対象は、情報流通プラットフォーム対処法で総務大臣の指定を受けた大規模事業者(グーグル、X、LINEヤフーなど13社)です。ただ、候補者についてうそを広める行為は、従来から誰が行っても公職選挙法の虚偽事項公表罪の対象です
東京・霞が関の総務省
総務省(東京・霞が関)写真:っ / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
10秒でわかるこの争点の構図

選挙中のSNSの偽情報、収益化停止などの対策を国の指針で促すべき?

対象の大規模事業者
13社
指針案の意見募集
11月24日まで
改正法の施行
2027年3月1日

偽情報対策を強めるべき

デマで稼ぐ仕組みを止めないと、選挙の公正は守れない。統一地方選までに実効性ある対策を

VS

表現の自由への懸念

「選挙の公正を害する」の線引きはあいまい。正当な批判まで萎縮し、言論への介入につながりかねない

どちらも認めていること
個別の投稿の削除を国が求めるべきではないこと
次の焦点
意見募集の結果と年内の正式決定、各社が統一地方選までにどの措置を選ぶか

この記事のポイント

  • 総務省は10月23日、選挙中のSNSでの偽情報や誹謗中傷による悪影響を減らすため、大規模なSNS事業者13社が取る対策の指針案を公表しました。24日から11月24日まで意見を募集し、早ければ年内に正式に決めます。
  • 7月に成立した改正情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)で、事業者に悪影響を減らす措置と、その実施状況の年1回の公表が義務付けられました。指針案はその具体例を示すもので、改正法は2027年3月1日に施行され、4月の統一地方選から適用されます。
  • 推奨する措置は9項目で、偽情報を含む投稿の収益化停止、AI生成の画像・動画の検知と警告表示、公的機関や候補者の公式情報の優先表示、ボットなどによる大量投稿への対応などです。
  • どの措置を取るかは事業者の判断に委ね、個別の投稿の削除も求めません。実効性を疑問視する声と、運用しだいで正当な発信まで萎縮するという懸念の両方があります。

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① 何が起きているのか

広がっている話を整理すると

広がっている話 確認できたこと
政府がSNSの投稿を検閲・削除させる 誤りです。指針案は「個別の情報の削除を求めるものではない」と明記しています
役所が収益化を止める動画を個別に決める 誤りです。どの措置を取り、どの投稿が対象になるかは事業者が判断します
収益化停止が義務になる 不正確です。義務は「悪影響を減らす措置」と「実施状況の公表」で、収益化停止は例示の一つです
対策しないと最大1億円の罰金 不正確です。1億円以下の罰金は、公表義務の違反で命令を受け、それにも従わなかった場合の法人への罰則です
新聞やテレビは対象外 事実です。対象は総務大臣が指定した大規模事業者13社です

指針案が推奨する9項目

指針案は、事業者に「推奨される軽減措置」として次の9項目を挙げています(いずれも例示で、すべての実施を義務付けるものではありません)。

  1. 体制の充実:選挙期間中とその前後に、法律の専門家の雇用などで対応体制を強める
  2. 送信防止措置:利用規約に基づく投稿の削除やアカウントの停止(表現の自由に十分配慮して)
  3. 収益化に関する措置:収益化の要件整備と厳格な審査、収益化の対象者であることの表示、閲覧数に応じた支払いの仕組みの見直し、選挙の公正を害するおそれのある情報を発信した場合などの収益化停止
  4. AI生成コンテンツへの対応:AI使用の表示機能、事業者自らによる検知と利用者への警告表示
  5. 発信者の情報の表示:「本人確認済」の表示、発信者の所在地(国・地域)の表示
  6. 優先的表示:公的機関や候補者・政党の公式情報、選挙公報などを見やすい位置に出す。偽情報の表示順位を下げる
  7. 人為的拡散への対応:プログラムや大量の端末による不正な大量発信の検知、関わったアカウントの停止
  8. 多様な主体との連携:選挙管理機関やファクトチェック機関との情報共有、候補者・政党向けの相談窓口
  9. 研究者などと連携した状況分析

罰則はあるのか

対象 行政処分・罰則
どの軽減措置を取るか(措置の中身) なし。事業者の判断に委ねる
実施状況を年1回公表する義務 総務大臣の報告徴収・勧告・命令あり。命令違反は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金
投稿する人(候補者についてのうそ) 従来どおり虚偽事項公表罪(落選させる目的なら4年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金)など

改正公職選挙法では、選挙運動の期間中にAIで作ったり加工したりした画像・動画をネットで広める人に、AIを使ったことの表示が義務付けられました(軽微な加工などは除く)。

これまでの流れ

時期 できごと
2024年 東京都知事選で「切り抜き動画」のビジネスが表面化。兵庫県知事選で偽情報・誹謗中傷が社会問題に
2024年12月 与野党が「選挙運動に関する各党協議会」を立ち上げ
2026年7月13日 改正公職選挙法と改正情プラ法が成立(議員立法)
2026年10月9日 各党協議会が、事業者が取るべき対策の事例を総務省に申し入れ
2026年10月23日 総務省が指針案を公表
10月24日〜11月24日 意見募集(パブリックコメント)
2027年3月1日 改正法が施行
2027年4月 統一地方選で初めて適用

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

偽情報対策を強めるべきの意見

  1. 2024年の東京都知事選では選挙の「切り抜き動画」で稼ぐビジネスの実態が表に出て、同年の兵庫県知事選では候補者への偽情報や誹謗中傷が社会問題になりました。2025年の参院選や今年2月の衆院選でも偽・誤情報の拡散が問題視され、与野党が対策に乗り出すきっかけになりました。

  2. 藤井比早之総務相は会見で、事業者が指針を踏まえた多様な措置を講じることで「選挙の公正に対する悪影響の軽減につながることが期待されます」と述べました。実施状況の公表を通じて、利用者や報道機関が各社の取り組みを比べることで実効性が高まるとしています。

  3. 朝日新聞は6月の社説で、選挙中のSNS規制として投稿の収益化停止と政党の広告禁止を求めました。琉球新報も社説で、アテンションエコノミーが選挙の場にも広がる中で「収益化停止に踏み込んだのは評価したい」とし、早急な法改正を求めています。

  4. 罰則がなく事業者任せでは不十分だという声もあります。日経は「処分や罰則はなく、実効性は見通せない」と報じ、朝日新聞の記事に寄せられた識者コメントでも、公表を通じて利用者がサービスを選ぶことで対応を促すという仕組みは弱いという指摘が出ています。

表現の自由への懸念の意見

  1. 国際大学の山口真一教授は日経の取材に「運用で広がりすぎると正当な批判をする発信者まで広告収入を得られなくなり、萎縮を招きかねない」と懸念を示しました。

  2. 琉球新報は社説で、収益化停止を評価しつつも「偽情報対策を名目とした権力の介入は許されない」と書きました。与野党の協議でも、SNS利用の過度な抑制や表現の自由の侵害、萎縮を招くことへの懸念が強く、調整が難航したと東京新聞は伝えています。

  3. 選挙コンサルタントの大濱崎卓真氏は、指針案は削除ではなくお金の流れと表示の仕組みに働きかける点で表現の自由への配慮として筋が通っているとしつつ、「選挙の公正を害するおそれ」があるかを最終的に判断するのが国でも選挙管理委員会でもなく民間事業者だという構造は変わらないと指摘しています。

  4. 指針案自身も、どの情報が「選挙の公正を害するおそれ」に当たるかを例示すると、事業者に対処を促しているように受け取られて「過剰な削除にもつながりかねない」と書いています。ほかの手段があるのに削除をみだりに行うことは「表現の自由の過度な制限につながり得る」として、特定の主張への差別的な扱いも避けるよう求めています。

実効性を問う見方

  1. 慶応大学の山本龍彦教授は日経の取材に「マーケットに依存した形での執行体制がどれくらい機能するか見定めることが重要だ」と述べました。共同通信は、推奨措置の例示にとどまり、実際の取り組みは事業者任せで実効性が課題になると解説しています。

  2. 大濱崎氏によると、改正法の施行は3月1日で、知事選の告示(3月25日の見込み)まで24日しかありません。意見募集が11月24日まで続くため、事業者が利用規約や審査の仕組みを整える期間は実質2か月ほどだとしています。

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

与野党・総務省

なぜ削除ではなく「お金」と「表示」に働きかけるのか

推測与野党の協議では、表現の自由の侵害や萎縮への懸念が強く、国が投稿の真偽を判断したり削除を求めたりする仕組みには踏み込めなかったとみられます。その代わりに、閲覧数で稼げる仕組みを止めて拡散の動機を減らし、公式情報を見やすくするという、投稿の中身に直接立ち入らない方法を選んだと考えられます。

推測のもとにした事実

総務省

なぜ罰則なしで実効性を確保できると考えるのか

推測総務省は、各社に実施状況を毎年公表させ、利用者や報道機関が比べることで取り組みを促す「見える化」の仕組みに期待しているとみられます。公表義務には勧告・命令と罰則があるため、少なくとも「何をしたか」は明らかにさせられるという考え方です。ただ、公表された中身をだれがどれだけ厳しく点検するかで効果が左右されます。

推測のもとにした事実

世の中の声

SNSの反応

偽情報対策を強めるべき寄りの声

  • 収益化を止めるだけで、選挙のデマはかなり減るはずだと思う

  • 表現の自由は大切だけれど、デマで人の判断をゆがめて稼ぐ自由まで守る必要はないと思う

  • 思っていたよりきちんとした対策が出てきたと思う

表現の自由への懸念寄りの声

  • 役所が収益化を止める動画を個別に決めるなら、恣意的な言論弾圧になりかねないと思う

  • 新聞や週刊誌、テレビの誤報は放っておいて、SNSだけ締めつけるのはおかしいと思う

  • 削除は無理でも、お金の流れから国が介入してくる段階に入った気がして心配だと思う

その他の声

  • 選挙の情報操作はお金目的だけではないので、収益化を止めても効果は限られると思う

  • 個別に判断するより、選挙期間中は全サイトで一律に収益化を止めるほうが表現の自由を守れると思う

集め方:Yahoo!リアルタイム検索で「総務省 指針 収益化停止」「選挙 SNS 指針案 表現の自由」などを検索し、2026年10月10〜24日のX(旧Twitter)の日本語投稿を確認しました。収益化停止を歓迎する投稿と、言論への介入や新聞・テレビとの扱いの違いを批判する投稿の両方が見られました
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 選挙で偽情報や誹謗中傷が広がる問題への対策が必要なこと
  • 国が個別の投稿の削除を求めるべきではないこと

意見が分かれている点

  • 収益化停止などの対策を、事業者任せの「推奨」にとどめてよいのか
  • 「選挙の公正を害するおそれ」の判断を民間事業者に委ねて、正当な批判まで萎縮しないか

今後の注目点

  • 11月24日までの意見募集の結果と、年内の正式決定
  • 各社が統一地方選までにどの措置を選び、実施状況をどう公表するか
  • AIで作った画像・動画の表示義務が、選挙の現場で守られるか

総務省の指針案は、大規模SNS事業者に偽情報対策の具体例を示すもので、収益化停止はその一つです。政府が投稿を削除させたり、役所が収益化を止める動画を決めたりする仕組みではありません。どの措置を取るかは事業者が判断し、措置の中身に罰則はありませんが、実施状況の公表には勧告・命令と罰則があります。 対策を強めるべきだとする立場は、デマで稼ぐ仕組みを止めないと選挙の公正は守れず、事業者任せでは足りないと考えます。表現の自由を心配する立場は、線引きがあいまいなまま運用が広がれば正当な批判まで萎縮し、言論への介入につながりかねないと考えています。

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