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競馬の払戻金と『二重課税』 控除率25%と所得税の関係を法律で検証

競馬や競輪の払戻金をめぐり、与党内で非課税化を含む税制見直し論が出ていると産経新聞が報じました。馬券は買った時点で約25%が差し引かれ、当たればさらに所得税がかかるため「二重課税だ」という声は、国会でも議員が取り上げてきました。法律と国会答弁、最高裁判決から確かめられたことを整理し、非課税・見直しを求める立場と、課税を維持すべきだとする立場の見方をまとめました。

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結論:広がっている話は本当?

  • 不正確「競馬の払戻金への課税は二重課税だ」馬券を買った時点で差し引かれる分(控除)は主催者の取り分で、国庫納付金も日本中央競馬会(JRA)が納めるお金です。買った人の所得に2回税金がかかる、という税法上の意味の二重課税には当たりません。ただ、買う側から見れば、引かれた上に課税される「二重の負担」と感じる構造があるのは事実です
  • 事実「馬券は買った時点で約25%が引かれている」JRAの払戻率は単勝・複勝が80%、3連単が72.5%、WIN5が70%などで、券種によって20〜30%が差し引かれます。平均すると約25%です
  • 事実「宝くじの当選金は税金がかからない」当せん金付証票法13条で所得税を課さないと定められています。サッカーくじ(toto)の払戻金も法律で非課税です。宝くじは当選金の割合が5割以下と低いことが理由だと、政府は国会で説明しています
  • 不正確「外れ馬券は経費にできない」一時所得なら外れ馬券は差し引けません。ただ、最高裁は2015年と2017年に、長期間・大量に継続して買い、利益を上げていた人の払戻金は雑所得で、外れ馬券も経費になると判断しました。国税庁も2018年に通達を改めています
  • 不正確「50万円までの払戻しなら税金はかからない」50万円の特別控除は1回ごとではなく、1年間の一時所得の合計に対して1回だけです。払戻金から当たり馬券の購入費を引いた額で計算するため、払戻しが年に何回もあれば50万円を超えることがあります
JRAの単勝馬券(2022年日本ダービー)
JRAの単勝馬券(イメージ)写真:Rory trains / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
10秒でわかるこの争点の構図

競馬の払戻金への課税、「二重課税」をやめて非課税にすべき?

馬券を買った時点で引かれる割合
約25%(券種で20〜30%)
JRAが国に納める第1国庫納付金
売上の10%
宝くじの当選金の割合(2024年度)
46.4%(非課税)

非課税・見直しを求める

買った時点で引かれた上に課税され、宝くじとも不公平。申告も複雑で見直すべき

VS

課税を維持すべき

払戻金も所得で、税を負担する力がある。国庫納付金は税ではなく、依存症も心配

どちらも認めていること
外れ馬券の扱いがわかりにくく、高額の追徴を受ける人がいること
次の焦点
年末に向けた与党の税制改正の議論で、公営競技の課税が取り上げられるか

この記事のポイント

  • 産経新聞は10月17日、競馬や競輪などの払戻金をめぐり、与党内で非課税化を含む税制見直し論が浮上していると報じました。買った時点で約25%が主催者の取り分として引かれ、さらに課税されるため「二重に取られる」との不満があるとしています。
  • 払戻金は原則として一時所得です。1年間の払戻金から当たり馬券の購入費と特別控除50万円を引き、その半分を給与などと合わせて課税します。
  • 「二重課税」は、維新の藤巻健太衆院議員(2023年)やNHK党の齊藤健一郎参院議員(2024年)が国会で取り上げました。政府は、払戻金も個人の税を負担する力を増やすものだとして、所得税をかけるべきだと答えています。
  • 外れ馬券は原則として経費になりませんが、最高裁は継続的に大量に買って利益を上げていた人には、経費と認めました。

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① 何が起きているのか

広がっている話を整理すると

広がっている話 確認できたこと
払戻金への課税は二重課税だ 税法上の二重課税には当たりません。差し引かれる分は主催者の取り分で、国庫納付金もJRAが納めるものです。ただ、買う側から見て「二重の負担」になる構造はあります
馬券は買った時点で約25%引かれる 事実です。JRAは券種ごとに払戻率を70〜80%に設定しています
宝くじの当選金は非課税 事実です。当せん金付証票法13条で定められています。totoの払戻金も非課税です
外れ馬券は経費にできない 原則はそうですが、継続的に大量に買って利益を上げていた人は、最高裁で経費と認められました
払戻しが50万円までなら税金はかからない 50万円の控除は1年分の合計に1回だけです。年に何回も当たれば超えることがあります

払戻金の税金はどう計算するか

払戻金は原則として「一時所得」です(所得税法34条)。

  • 一時所得の金額 = 1年間の払戻金の合計 − 当たり馬券の購入費 − 特別控除(最高50万円)
  • その半分を、給与などほかの所得と合わせて税額を計算します(所得税法22条)

たとえば、1年間に馬券を1000万円分買い、1万円の当たり馬券で900万円の払戻しを受けたとします。収支は100万円の負けですが、一時所得は900万円−1万円−50万円=849万円で、その半分の424万5000円がほかの所得に足されます。外れ馬券の999万円は差し引けません。「負けているのに課税される」と言われるのは、このためです。

外れ馬券が経費になるのはどんなとき

時期 できごと
2015年3月 最高裁が、ソフトで長期間・大量に網羅的に買い、恒常的に利益を上げていた人の払戻金を雑所得とし、外れ馬券も経費と判断
2017年12月 最高裁が、ソフトを使わなくても、購入の態様や利益の状況から雑所得に当たり、外れ馬券も経費になると判断
2018年6月 国税庁が所得税基本通達34-1を改正。年間を通じてほぼすべてのレースで買い、利益を上げ続けていることが客観的に明らかな場合などを雑所得とした

一般の競馬ファンは、これまでどおり一時所得で、外れ馬券は経費にできないと国税庁は説明しています。

こんなことがあった:じゃいさんの追徴課税

この線引きで実際に起きたのが、お笑いトリオ「インスタントジョンソン」のじゃいさん(X:@instantjayjay)のケースです。

時期 できごと
2016〜20年分 1年間に買ったすべての馬券代を経費として払戻金から差し引き、申告していた
2020年12月 川崎競馬で6410万6465円の払戻しを受ける
2022年3月 東京国税局から、払戻金は「一時所得」に当たり外れ馬券代は経費にできないと指摘され、延滞税を含む数千万円を納付
2022年6月 YouTubeで「破産しました」と明かし、国税不服審判所に不服を申し立てる
2025年〜 税制の見直しを求めて政治家と対談を重ね、2026年8月には日本維新の会の勉強会にも招かれる

じゃいさんによると、5年間に馬券に使った額は合わせて数億円で、払戻金も数億円でした。通算では勝っていたものの、外れ馬券代が差し引けないため、実際のもうけより大きな金額に税金がかかる形になりました。追徴の額は「地方のマンションが買えるくらい」「年収の2倍以上」だったと話しています(FNNプライムオンライン、毎日新聞、日刊スポーツ)。

じゃいさんは2022年12月に一般社団法人「未来の競馬税制を考える会」を立ち上げ、本名の渡辺隆広として代表理事を務めています。法人の目的は、競馬を中心とした公営競技の納税環境の整備と「適正・公平な課税」の実現で、税制の調査研究や政策提言をしています。サイトでは、売上の25%が控除され、そのうち10%が国庫納付金になったうえで配当にも課税されることや、負けた分が考慮されない点を問題に挙げています。会員(サポーター)を募り、「政策決定者に声を届けるためには、数の力が何よりも重要」と呼びかけています(法人概要、SPAIA競馬)。

じゃいさん自身は、「外れ馬券を経費に」よりも「無税が一番良い」と考えていると述べています。一方でFNNは、過去の最高裁判例に照らすと、不服申し立てが認められる見込みは小さいと伝えていました。不服申し立てがその後どうなったかは、公表されている情報では確認できませんでした。

税法でいう「二重課税」とは

税法で問題になる二重課税は、同じ人の同じ所得や財産に、二度税金がかかることです。たとえば最高裁は2010年、相続税がかかった生命保険の年金に、さらに所得税をかけるのは二重課税に当たり許されないと判断しました。

競馬の場合、購入時に差し引かれる約25%はJRAの取り分で、そこからJRAが売上の10%を第1国庫納付金として国に納めます(日本中央競馬会法27条)。これはJRAの義務で、馬券を買った人に課す税ではありません。払戻金への所得税は、当たった人の所得への課税です。このため、税法上の二重課税には当たりません。

宝くじ・totoとの違い

当選金・払戻金の割合 所得税
競馬(JRA) 70〜80%(券種で違う) かかる(一時所得など)
宝くじ 5割以下(2024年度は46.4%) かからない(当せん金付証票法13条)
toto(サッカーくじ) 売上の2分の1以下 かからない(スポーツ振興投票法16条)

出典

一般社団法人未来の競馬税制を考える会(法人概要)SPAIA競馬(じゃいさんが国会議員を直撃「競馬税制」の問題点とは)(2/20)FNNプライムオンライン(馬券に数億円 追徴課税は数千万円 お笑い芸人訴える)(6/18)毎日新聞(お笑い芸人が国税に不服申し立て 馬券払戻金で追徴課税)(6/17)日刊スポーツ(巨額追徴課税で「破産」の芸人が“身銭”でロビー活動)(8/5)産経新聞(競馬の払戻金、与党内で非課税論が浮上「二重に取られる」)(10/17)e-Gov法令検索(所得税法 第22条・第34条)国税庁タックスアンサー(No.1490 一時所得)国税庁(競馬の馬券の払戻金に係る課税について)(6/1)裁判所(最高裁第三小法廷 平成27年3月10日判決)(3/10)JRA(6月7日以降の勝馬投票法ごとの払戻率について)(3/3)e-Gov法令検索(日本中央競馬会法 第27条・国庫納付金)e-Gov法令検索(当せん金付証票法 第13条)e-Gov法令検索(スポーツ振興投票の実施等に関する法律 第13条・第16条)国会会議録(衆議院財務金融委員会、鈴木俊一財務相の答弁)(3/15)国会会議録(衆議院財務金融委員会、鈴木財務相の答弁・所得区分)(3/15)衆議院(中谷一馬議員の質問主意書に対する政府答弁書)(4/26)国会会議録(衆議院総務委員会、総務省の答弁・宝くじ非課税の理由)(4/16)裁判所(最高裁第三小法廷 平成22年7月6日判決・生命保険年金)(7/6)産経新聞(「ギャンブル税制」実態に即した仕組みづくり必要に 木山泰嗣教授)(10/24)

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

非課税・見直しを求めるの意見

  1. 藤巻健太衆院議員(日本維新の会)は2023年3月の衆議院財務金融委員会で、馬券を買う時点で「事実上の税金である国庫納付金」を払っているのに、払戻金にさらに課税するのは二重課税に当たるのではないかとただしました。齊藤健一郎参院議員(NHK党、当時)も2024年3月の参議院総務委員会で、購入時と払戻時の「いわゆる二重課税」をやめてほしいという声が多数届いていると述べています。

  2. 宝くじは約50%が引かれても当選金は非課税なのに、馬券は引かれた上に課税されて不公平だという声があります。国民民主党の高沢一基衆院議員は2026年4月の衆議院総務委員会で、公営競技も公共の役に立つことが目的だとして、宝くじと同じように非課税にするのも一つの方法ではないかと述べました。

  3. 立憲民主党の中谷一馬衆院議員は2024年4月の質問主意書で、窓口で買った人の所得はつかめず公平を保てないとして、宝くじと同じ非課税や、払戻金を非課税にして主催者に課税する「馬券税」の復活、源泉徴収の導入などを提案しました。

  4. 2022年に数千万円の追徴課税を受けたお笑い芸人のじゃいさんは、議員と対談を重ね、日本維新の会の勉強会にも招かれて、税制の見直しを訴えています。維新では元参院議員の音喜多駿氏らがギャンブル税制の見直しを議論しています。じゃいさんは、払戻金を非課税にすれば大口の購入が増えて売上が伸び、その分の税収も入ると話しています。

  5. 税法学者の木山泰嗣・青山学院大教授は、外れ馬券が経費になるのは数年間の回収率が100%を超えた場合などに限られ、申告の時点では判断できないと指摘しました。利益に一律で課税する特定口座を設けるなど、実態に合った仕組みが必要だとしています。

課税を維持すべきの意見

  1. 鈴木俊一財務相(当時)は2023年3月、藤巻議員の質問に対し、払戻金も個人が稼いで税を負担する力を増やすものであることに変わりはなく、所得税を課すべきだと答えました。2026年4月の衆議院総務委員会でも、財務省は同じ考え方を説明しています。

  2. 政府は2024年4月の答弁書で、所得税はすべての所得を課税対象にするのが基本だとして、非課税化や馬券税の導入、源泉徴収の導入は考えていないとしました。宝くじが非課税なのは、当選金の割合が5割以下と低く、売上の多くが公益目的に使われるためだと説明しています。

  3. 国庫納付金は、日本中央競馬会法に基づいてJRAが売上の10%と剰余金の半分を国に納めるもので、馬券を買った人に課す税ではありません。買った人の所得に二度課税しているわけではない、という見方の根拠になります。

  4. 産経新聞は、ギャンブルの利用が広がれば依存症が増えかねず、議論の先行きは見通せないと伝えています。

海外の例

  1. 海外でも扱いは分かれます。米国では、趣味で賭ける人の賭けの勝ち分は競馬や宝くじも含めて全額が課税対象です。英国では、賭けや賭博は原則として事業に当たらず、賭けた人の利益に課税しない代わりに、損失も差し引けません。じゃいさんは「こんな税金の取り方をしているのは、日本だけ」と話していますが、少なくとも米国も勝ち分に課税しています。

Xの発信

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

日本維新の会

なぜ与党に入った維新で、ギャンブル税制の見直し論が出てきたのか

推測大阪のIR(カジノを含む統合型リゾート)の開業を控え、カジノと公営競技の税の扱いをそろえて考える必要が出てきたことが背景にあるとみられます。維新は以前から議員がこの問題を国会で取り上げており、じゃいさんとの対談などで関心も集まっていました。一方で、勉強会では「パチンコはどうなのか」という意見も出ており、見直しが減税だけでなく、これまで申告の少なかったパチンコの利益への課税に広がる可能性もあります。

推測のもとにした事実

世の中の声

SNSの反応

非課税・見直しを求める寄りの声

  • 馬券は買った時点で控除率の分が引かれているし、外れ馬券も山ほどあるのに、当たりにまで課税するのはおかしいと思う

  • 年間で5000万円使って6000万円戻っても、実際のもうけは1000万円なのに、外れ馬券が経費にならないのは納得できないと思う

  • この税制の見直しを言い出した議員がいるなら、ずっと応援したいと思う

課税を維持すべき寄りの声

  • 非課税にするより、まずはしっかり税金を取って、ギャンブル依存症の対策を進めてほしいと思う

その他の声

  • 政府は以前、国会で払戻金を非課税にする考えはないと答えているので、国はそう簡単には動かないと思う

  • 競馬で当たっても申告が必要だと知らない人は多く、後から追徴課税で勝ち分がほとんど消えてしまうことがあると思う

集め方:X(旧Twitter)で「競馬 二重課税」「払戻金 非課税」「馬券 課税 おかしい」「競馬 非課税 依存症」「競馬 非課税 反対」などで検索し、2026年10月を中心に日本語投稿を確認しました。非課税化や見直しを求める投稿が多く、課税の維持を求める投稿は依存症対策の立場からのものが中心でした
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 外れ馬券を経費にできるかどうかの線引きがわかりにくく、高額の追徴を受ける人がいること
  • 窓口で現金で買うと記録が残らず、ネット投票の人との間で課税の不公平が生じうること

意見が分かれている点

  • 購入時に引かれる分(国庫納付金を含む)を、実質的な税と見るべきか
  • 公営競技の払戻金を、宝くじと同じように非課税にすべきか

今後の注目点

  • 年末に向けた与党の税制改正の議論で、公営競技の課税が取り上げられるか
  • IRの開業を控え、カジノやパチンコを含めたギャンブル税制全体の見直しに広がるか

馬券を買うと約25%が差し引かれ、当たればさらに所得税がかかるのは事実です。ただ、差し引かれる分は主催者の取り分で、そのうちの国庫納付金もJRAが納めるお金のため、買った人の同じ所得に二度課税するという税法上の「二重課税」には当たりません。宝くじが非課税なのは事実ですが、政府は当選金の割合が低いことを理由に挙げています。 非課税・見直しを求める立場は、引かれた上に課税されるのは宝くじと比べて不公平で、申告も複雑だと考えます。課税を維持すべきだとする立場は、払戻金も所得であり、税を負担する力に応じて課税すべきだと考えています。

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※ 記事を読んだ方が自由に答える読者アンケートで、統計的な世論調査ではありません。当サイトとしての賛否を示すものでもありません。

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