古川デジタル相「自分の情報は自分で守って」 当たり前の呼びかけか、責任の押しつけか
企業からの個人情報の流出が相次ぐなか、古川俊治デジタル相が「自分の情報は自分で守る」意識を持つよう国民に呼びかけ、批判を浴びています。個人の対策も欠かせないとする立場と、まず国や企業が守るべきだとする立場の主張をまとめました。

この記事のポイント
- 古川俊治デジタル相は10月6日の記者会見で、不正アクセスによる個人情報の流出が相次いでいるとして、「『自分の情報は自分で守る』この意識を持って」と国民に協力を呼びかけました。
- 具体的な対策として、①パスワードの使い回しをやめる ②多要素認証を使う ③不審なメールやSMSに注意する、の3点を挙げました。
- この2週間ほどで、カーシェアのタイムズカー(約660万件)や焼肉チェーン(約1080万件)などで、流出が相次いで明らかになっています。
- 発言には「企業に預けた情報が流出したら個人ではどうしようもない」と批判が出る一方、「間違ったことは言っていない」と擁護する専門家もいます。
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① 何が起きているのか
大臣が挙げた3つの対策
- パスワードの使い回しをやめる
- 多要素認証を利用する
- 不審なメールやSMSに注意する
最近明らかになった主な流出(報道による件数)
| 企業・サービス | 件数 |
|---|---|
| タイムズカー(カーシェア) | 約660万件 |
| 焼肉チェーン「焼肉きんぐ」 | 約1080万件 |
| セイコーマート | 約58万件 |
| 大和証券 | 約22万件(可能性) |
| デジタル庁(政府共通の業務基盤) | 約24万6000件(可能性、9月発表) |
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
自衛も必要派の意見
サイバー攻撃は、企業や組織だけの問題ではありません。流出した情報はIDやパスワード、クレジットカード、運転免許証にまで及ぶことがあり、なりすましや不正送金といった二次被害も心配です。一人ひとりの対策が被害の防止につながります。企業にも個人にも、基本的な安全対策を徹底してほしい(古川俊治・デジタル相)。
大臣は別に間違ったことは言っていません。家の玄関の鍵を人任せにしないように、ネット上の情報も最終的には自分で責任を持つ必要があります。企業の対策に税金を充てるのも問題で、企業は自らの責任で対策すべきです(小木曽健・国際大学GLOCOM客員研究員)。
大臣が挙げた3つの対策は、流出そのものを防ぐものではなく、流出した情報が悪用されて被害が広がるのを防ぐためのものです。パスワードの使い回しをやめ、多要素認証を使えば、別のサービスへの不正ログインを防ぎやすくなります。政府も、国家サイバー統括室を中心に、関係省庁や被害を届け出た企業と連携して対策を進めるとしています。
国・企業の責任派の意見
企業に預けた情報が流出してしまえば、個人ではどうしようもありません。個人にできることには限度があります(SNS上の批判、女性自身・週刊女性PRIMEの報道)。企業が守れていない情報を個人に守れというのは、責任の所在がずれています。
デジタル庁自身も9月、政府共通の業務基盤への不正アクセスで、職員らの個人情報約24万6000件が漏れた可能性があると発表したばかりです。国民に自衛を求める前に、国が自らの守りを固めるべきです。
擁護する小木曽氏も、日本の行政や自治体は民間と同じ水準のシステムしか使っていないと指摘し、政府や政治家が高度なセキュリティーの整備を進めるべきだとしています。政府には、個人への呼びかけより先にやるべき役割があります。
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
古川デジタル相
なぜ「自分で守って」という言い方になったのか
推測会見の全体では、企業にも個人にも対策を求め、政府も連携して取り組むと述べています。そのなかの「自分の情報は自分で守る」という一言が切り取られて広まり、個人に責任を押しつけたように受け取られたとみられます。ただ、デジタル庁自身の流出が明らかになった直後だっただけに、言葉の選び方への配慮が足りなかったとの見方もできます。
推測のもとにした事実
- ・大臣は会見で、企業と個人の双方に基本的な安全対策の徹底を求め、政府も関係省庁や企業と連携するとしたデジタル庁(古川大臣記者会見)(10/6)
- ・デジタル庁は9月11日、約24万6000件の個人情報が漏えいした可能性を発表していた電波新聞デジタル(デジタル庁への不正アクセス)(9/12)
世の中の声
③ ポイント整理
意見が一致している点
- パスワードの使い回しをやめるなど、個人にできる対策には意味があること
- 企業や国も、情報を守る対策を強めなければならないこと
意見が分かれている点
- 情報を守る責任の重心を、個人・企業・国のどこに置くか
- 大臣として、この言い方が適切だったか
今後の注目点
- 相次ぐ流出への、政府の具体的な対策
- 流出した企業への調査や処分
個人の対策にも意味があり、企業や国も守りを固めるべきだという点では、どちらの立場もほぼ一致しています。分かれているのは、責任の重心と、大臣の言葉の選び方です。 自衛も必要派は、二次被害を防ぐには一人ひとりの対策が欠かせず、大臣の呼びかけは当然だと考えます。国・企業の責任派は、流出の多くは個人には防げないうえ、デジタル庁自身も流出を起こしたばかりで、まず国と企業が責任を果たすべきだと主張しています。
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