Qilin「AIで交渉相手が週数百社に」 身代金の支払いは法律で禁じるべきか
ランサムウェア集団「Qilin(キリン)」がJNNの取材に、AIを使って攻撃を効率化し、交渉相手が週に数百社に増えたと主張しました。被害が広がるなか、海外では身代金の支払いを法律で禁じる動きもあります。支払いを禁じるべきだという立場と、一律の禁止には慎重な立場の主張をまとめました。

この記事のポイント
- ランサムウェア集団「Qilin(キリン)」はJNNの取材に、独自に開発したAIを攻撃に常に使っていると答えました。交渉相手は過去2年で、週に数十社から数百社に増えたと主張しています。いずれも犯罪集団側の言い分で、検証されたものではありません。
- Qilinは交渉に応じない企業に対し、AIで特定した機密情報を送りつけて圧力をかける姿勢も示唆しました。
- 警察庁によると、国内でQilinによる被害は2023年4月以降、53の企業などで確認されています。2025年のアサヒグループホールディングスの被害も含まれているとみられます。中心メンバーとされるロシア国籍の男は5月に大阪市内で拘束され、10月にドイツ当局に逮捕されました。
- 国内のランサムウェア被害は、2026年上半期に123件と、統計を取り始めてから半期で最多になりました。
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① 何が起きているのか
Qilinをめぐる主な動き
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年10月ごろ | Qilinが活動を始める。世界で約4000社が被害に遭ったとみられる |
| 2025年 | アサヒグループホールディングスが被害に遭う |
| 2026年5月 | 中心メンバーとされるロシア国籍の男(28)を大阪市内のホテルで拘束 |
| 2026年10月 | 男がドイツに引き渡され、ドイツ当局が逮捕 |
| 2026年10月14日 | QilinがJNNの取材に、AIで交渉相手が週数百社に増えたと主張 |
国内のランサムウェア被害(警察庁)
- 2026年上半期の被害報告は123件で、半期として最多
- 調査や復旧に1000万円以上かかった組織が約6割
- 侵入口の多くは、VPN(社外から社内のネットワークにつなぐ機器)
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
支払い禁止派の意見
英国政府は2025年7月、公共機関や重要インフラ(国民保健サービス、自治体、学校など)が身代金を支払うことを禁じる方針を打ち出しました。それ以外の企業にも、支払う前に政府への届け出を求めます。意見公募では、4分の3近くが禁止に賛成しました。ジャービス治安担当相は、ランサムウェアを「人々を危険にさらし、生活を破壊する略奪的な犯罪だ」としています。
英国家サイバーセキュリティセンターの初代長官だったシアラン・マーティン氏は、ランサムウェアはほとんどの企業にとって最も大きな脅威だとして、身代金の支払いを禁じるよう求めました。あわせて、被害を受けた企業への支援を充実させる必要があるとしています。
支払えば、禁止されているかどうかに関係なく、次の攻撃の標的になりやすくなります(オリバー・ノーマン氏、データ保護企業Veritas)。身代金は犯罪集団の資金源になり、AIによる攻撃の効率化が進むなか、支払いを断つことが攻撃を減らす近道だという考え方です。
慎重派の意見
予防がいちばんだとしても、支払う以外に手がなかった事例はいくつもあります(ジェイク・ムーア氏、セキュリティ企業ESET)。事業が止まれば、取引先や利用者にも被害が広がります。
支払いを禁じれば、攻撃の標的が、法律の対象にならない中小の事業者に移り、被害総額はむしろ膨らむという見方があります。法律で縛るより、補助金でバックアップの仕組みに投資したり、セキュリティへの支出を税制で優遇したりするほうが効果的だという意見も出ています。
米国は、企業を過度に縛ることになるとの懸念から、支払いの禁止には慎重な姿勢をとってきました。
専門家・経済界
生成AIを使って効率的なプログラムを作れば、1日1000件だった攻撃が100万件ほどに増やせる可能性があります(森井昌克・神戸大学名誉教授)。経済同友会の山口明夫代表幹事も、攻撃者のAIの利用が前年より56%増えたという調査を紹介しています。
政府や企業もAIを使ってシステムの弱点を見つけ、外部から攻撃される余地をなくす対策が必要だと、専門家は指摘しています。
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
Qilin
なぜ取材に応じ、AIの利用を明かすのか
推測中心メンバーとされる人物が逮捕されたばかりです。それでも攻撃の力は衰えていないと示し、交渉中の企業に支払いを急がせる狙いがあるとみられます。「週に数百社」という数字も、自分たちを大きく見せるための宣伝の可能性があり、そのまま受け取ることはできません。
推測のもとにした事実
- ・中心メンバーとされるロシア国籍の男が10月にドイツ当局に逮捕された日本経済新聞(警察庁への取材)(10/9)
- ・Qilinは交渉に応じない企業に機密情報を送りつけて圧力をかけることを示唆したTBS NEWS DIG(JNN・Yahoo!ニュース)(10/14)
世の中の声
SNSの反応
慎重寄りの声
「身代金は払わない」のが正解だと思っていても、経営者から「事業を止めないためなら払うことも考えないと」と言われたら、現場は悩むと思う
その他の声
日本が「世界で最も弱い」なんてことはない。犯罪者の言うことをうのみにしてはいけないと思う
中心メンバーを日本で拘束したのは、映画みたいな快挙だと思う
集め方:X(旧Twitter)で「Qilin OR キリン」×「ランサム」(いいね5件以上、2026年10月7日〜14日)、「身代金」×「支払い OR 払う」×「禁止 OR べき OR 仕方ない OR 法律」(いいね5件以上、2026年4月以降)で検索し、日本語投稿を確認しました。中心メンバーの拘束を評価する声や、Qilinの主張をうのみにすべきでないという声が目立ちました。支払いの禁止をはっきり求める投稿は、確認できた範囲では見当たりませんでした
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- ランサムウェアの被害が広がっており、対策の強化が急がれること
- バックアップやシステムの弱点の点検など、事前の備えが最も大切なこと
意見が分かれている点
- 身代金の支払いを法律で禁じるべきか、企業の判断に任せるべきか
- 禁止する場合、被害を受けた企業をどう支えるか
今後の注目点
- 日本の警察とドイツ当局による、国内被害の捜査の行方
- 英国など海外での支払い禁止の制度づくりの動き
- 日本政府が企業の対策をどう後押しするか
ランサムウェアの被害が広がり、AIで攻撃がさらに効率化されるおそれがあるという点では、見方は一致しています。分かれているのは、身代金の扱いです。 支払い禁止派は、支払いが犯罪集団の資金源になり、次の攻撃を招くとして、法律で断つべきだと考えます。慎重派は、支払うしか手がない企業もあるうえ、禁止すれば攻撃が中小の事業者に向かうおそれがあるとして、備えへの支援を優先すべきだと考えています。
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