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生活保護で母国の配偶者は呼べる? 夫婦で受給したいと相談されたら

日本で生活保護を受けている外国人が「母国に住む配偶者を日本に呼び、夫婦で生活保護を受けたい」と相談したら、どうなるのでしょうか。配偶者の在留資格の審査、生活保護法の世帯の考え方、2011年の厚労省通知を順にたどり、実際にはどこで止まるのかを確かめました。2010年に大阪市で来日直後の外国人が生活保護を申請した事例や、外国人への生活保護の見直しをめぐる動きも整理し、見直しを求める立場と維持を求める立場の主張をまとめています。

結論:広がっている話は本当?

  • 不正確「生活保護のまま母国の配偶者を呼び寄せられる」配偶者の在留資格の審査では、呼び寄せる側の課税・納税証明書や身元保証書の提出が求められます。入管法5条1項3号は「貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」の上陸を認めていません。受給を理由に一律に禁じる条文はありませんが、行政書士は受給者からの同じような相談に、まず収入を得て生活保護をやめてからの話になると答えています
  • 不正確「外国人は来日してすぐ、簡単に生活保護を受けられる」2010年に大阪市で、来日直後の中国人48人が申請し、32人に保護が決まった事例はあります(のちに全員が辞退)。これを受けて厚労省は2011年、入国間もない外国人の申請では、在留資格の取得時に入管へ出した生計の資料を出すよう求め、出さなければ却下できるようにしました。対象も永住者や定住者など、活動に制限のない在留資格の人に限られます
  • 誤り「最高裁が、外国人への生活保護は違法だと判断した」2014年の最高裁判決は、外国人は生活保護法にもとづく受給権を持たないとしただけで、行政措置による保護は「対象となり得る」と述べています。2026年9月のガーナ人男性の訴訟でも、最高裁は法律上の権利を認めなかっただけで、行政措置による保護そのものは否定していません
  • 誤り「生活保護を受けている世帯の多くは外国人」2023年度に生活保護を受けた世帯は165万478世帯で、世帯主が外国籍の世帯は4万7317世帯、全体の約2.9%です
厚生労働省などが入る中央合同庁舎第5号館
中央合同庁舎第5号館(厚生労働省など)写真:Lombroso / Wikimedia Commons(Public domain)
10秒でわかるこの争点の構図

生活保護の外国人が、母国の配偶者を呼んで夫婦で受給できるのか

受給世帯のうち世帯主が外国籍(2023年度)
約2.9%
2010年大阪、来日直後に申請した中国人
48人(全員辞退)
配偶者の在留資格の審査で求められるもの
収入・納税の証明

外国人への支給を見直すべき

制度の利用実態がつかめていない。対象の在留資格を見直し、悪用の余地をなくすべき

VS

人道の観点から維持すべき

受給者の多くは日本で長く暮らす人。人道や国際協調の観点から保護を続けるべき

どちらも認めていること
外国人の受給状況をきちんと把握する必要があること
次の焦点
2027年6月からのマイナンバーによる在留資格の確認と、行政措置の対象の見直しの行方

この記事のポイント

  • 生活保護を受けている外国人が母国の配偶者を呼び寄せるには、まず配偶者の在留資格の審査を通る必要があります。審査では、滞在費用を出す人の課税・納税証明書や、日本に住む配偶者の身元保証書が求められます。
  • 入管法5条1項3号は「貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」の上陸を認めていません。受給中であることだけで一律に禁じる条文はありませんが、生計を立てられることを示すのは難しく、行政書士は同じような相談に、まず収入を得て生活保護をやめてからの話になると答えています。
  • 仮に配偶者が来日できても、生活保護は世帯単位で決まり、受給者は世帯の構成が変わればすぐに届け出なければなりません。入国して間もない外国人が申請するときは、2011年の厚労省通知により、入管に出した生計の資料を添える必要があり、出さなければ申請を却下できます。
  • 2010年には大阪市で、「定住者」として来日した直後の中国人48人が生活保護を申請し、32人に保護が決まりました(のちに全員が辞退)。この事例を受けて、申請の扱いと入管の審査が厳しくなりました。
  • 政府は2026年1月、受給者の在留資格を確認できる仕組みを整え、行政措置の対象の見直しも含めて検討するとしました。10月には永住許可の要件も厳しくなっています。

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① 何が起きているのか

「母国の配偶者を呼んで、夫婦で受給したい」と相談されたら

段階 誰が判断するか 何が問われるか
① 配偶者の在留資格の申請 入管 滞在費用を出す人の課税・納税証明書、日本に住む配偶者の身元保証書。入管法5条1項3号(国や自治体の負担になるおそれのある人は上陸できない)
② 来日後の生活保護の申請 自治体の福祉事務所 生活保護は世帯単位で判断。入国して間もない外国人は、在留資格の申請時に入管へ出した生計の資料を添える必要があり、出さなければ却下できる
③ 受給中の世帯の変化 福祉事務所 受給者は、世帯の構成が変わったらすぐに届け出る義務がある
④ 在留資格の更新 入管 更新のある在留資格では、生活保護を受けていると生計を維持できないとみなされ、更新が認められない可能性が高くなる

行政書士の三木ひとみ氏は、生活保護の受給者から海外の人と結婚して配偶者として呼び寄せたいと相談されたとき、まず収入を得て生活保護をやめてからの話になると答えたと書いています。

広がっている話を整理すると

広がっている話 確認できたこと
生活保護を受けたままでも、母国の配偶者を呼び寄せられる 一律に禁じる条文はありませんが、審査では呼び寄せる側の収入や納税の証明が求められ、受給中は難しいとされます
外国人は来日してすぐ生活保護を受けられる 2010年に大阪で事例がありましたが、2011年から書類の提出が求められ、出さなければ却下できるようになりました
最高裁が外国人への生活保護を違法とした 誤りです。法律上の受給権を否定しただけで、行政措置による保護は「対象となり得る」としています
生活保護世帯の多くは外国人 誤りです。2023年度は全体の約2.9%です

2010年、大阪市の48人の申請

時期 できごと
2010年5〜6月 中国・福建省出身の残留孤児の姉妹の親族とされる48人が、「定住者」の在留資格で来日。直後に大阪市の5つの区役所で生活保護を申請
2010年6月29日 大阪市が公表。受給目的の入国の可能性があるとして、実態調査へ
2010年7月 大阪市は48人のうち32人に保護を決め、26人に支給
2010年9月 48人全員が辞退。入管は在留資格を「定住者」から「特定活動」に変更
2011年8月17日 厚労省が通知。入国間もない外国人の申請には、在留資格を得たときに入管へ出した生計の資料の提出を求め、出さなければ却下できるとした。入管にも生計維持能力の審査の厳格化を求めた

入国の申請書類のなかには、収入や扶養者の職業の欄に「生活保護」、扶養者の欄に「区役所」と書かれたものがあったと報じられています(日本経済新聞、2011年4月27日。弁護士JPニュースの記事による)。

外国人への生活保護の仕組み

  • 生活保護法の対象は「国民」です。外国人には1954年の厚生省の通知にもとづき、「行政措置」として保護が行われています
  • 対象は、永住者・定住者・日本人の配偶者など活動に制限のない在留資格の人や、難民認定を受けた人などです。留学生や技能実習生などは対象外です
  • 2014年7月18日、最高裁は外国人に生活保護法上の受給権はないとしつつ、行政措置による保護の対象にはなり得ると述べました
  • 2026年9月、最高裁はガーナ人男性の上告を退けました。裁判長は反対意見で、規定は違憲だとしています

なお、行政書士の記事は入管法の規定を「5条3項」と書いていますが、条文では5条1項3号です。

数字で見る

項目 数字
生活保護を受けた世帯(2023年度) 165万478世帯
うち世帯主が外国籍 4万7317世帯(約2.9%)
在留外国人の保護率 1.93%(全体は1.62%)

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

外国人への支給を見直すべきの意見

  1. 上野賢一郎厚労相は2月3日の会見で、外国人への生活保護は「制度の利用実態の把握が十分ではないという課題が指摘されています」と述べました。行政措置の対象を見直すことについて、具体的な方針や時期は決まっていないとしつつ、「当然そうしたことは十分念頭に置く必要がある」とも話しています。

  2. 政府が1月23日にまとめた外国人政策の総合的対応策は、自治体と連携して受給者の在留資格を確かめ、利用実態を把握するとしています。そのうえで「行政措置の対象となる者の見直しも含め」、制度の適正な利用に向けた措置を検討するとしました。

  3. 北神圭朗衆院議員は、生活保護法の対象は国民に限られているのに、70年以上前の局長通知一つで「当分の間」外国人にも支給していると指摘しました。国会で支給総額を尋ねても厚労省は「把握していない」と答え、その後の予算委では厚労相から、2022年度の生活扶助費と住宅扶助費が合わせて約560億円との答弁を得たとしています(2025年2月の投稿)。

  4. 2010年の大阪の事例では、入国の申請書類の収入欄に「生活保護」、扶養者の欄に「区役所」と書かれたものがありました。入管の審査をすり抜けて来日直後に保護を受けられたことが、制度の欠陥として問題になりました。

人道の観点から維持すべきの意見

  1. 弁護士や研究者でつくる「生活保護問題対策全国会議」は、1月29日に政府方針に反対する緊急声明を出しました。支援団体「つくろい東京ファンド」の大澤優真氏は、基礎的なデータを集めること自体は問題ないとしながらも、対象の縮小が前提になっているのではないかと懸念しています。外国人の不正受給が多いかのような誤解を招き、不安をあおるおそれがあるとも指摘しています。

  2. ガーナ人男性の訴訟で、最高裁の三浦守裁判長は反対意見を書きました。療養目的の在留資格で暮らす外国人に必要な保護を認めないのは「著しく人道に反する」として、こうした外国人を対象外とする生活保護法の規定は違憲だとしています。

  3. 東京新聞の検証によると、外国人の受給世帯は全体の2.87%で、在留外国人の保護率(1.93%)も全体の保護率(1.62%)と大きくは変わりません。受給できるのは、永住者や定住者など「国内での活動制限がない在留資格を持つ人に限られる」としています。

  4. 行政書士の三木ひとみ氏は、2010年の大阪の事例のあと、厚労省の通知や入管の審査の厳格化で手当てが進んだと説明しています。生活保護の受給者から海外の人を配偶者として呼び寄せたいと相談を受けたときも、「まず収入を得られるようになって、生活保護を廃止してからの話になりますね」と答えたとしており、今の仕組みでも歯止めはあるとの見方です。

制度の決まり(入管の審査と生活保護法)

  1. 入管法5条1項は上陸できない外国人を定め、その3号に「貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」を挙げています。

  2. 在留資格「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の申請では、滞在費用を出す人の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書と納税証明書、日本に住む配偶者の身元保証書などが求められます。「家族滞在」では、扶養する人の在職証明書や課税・納税証明書などで扶養能力を示します。

  3. 10月1日に改定された永住許可の指針では、日本人や永住者の配偶者が永住許可を受ける特例の条件が、「婚姻3年・在留1年」から「婚姻5年・在留3年」に引き上げられます。収入が日本人世帯の平均を継続して上回ることも求められます。

  4. 生活保護法10条は、保護の要否と程度を「世帯を単位として」決めるとしています。61条は、受給者が世帯の構成などに変化があったとき、すみやかに福祉事務所などへ届け出るよう義務づけています。外国人への保護も、この法律の扱いに準じて行われます。

  5. 行政書士の三木ひとみ氏によると、更新のある在留資格では、生活保護を受けていると在留資格の更新のときに「生計を維持できない」とみなされ、認められない可能性が高くなります。

関連動画

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背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

政府(厚労省・入管庁)

なぜ今、外国人の生活保護や永住の要件を見直すのか

推測「秩序ある共生社会」を掲げる高市政権の外国人政策の一環として、制度への不信感が広がる前に実態を数字でつかみ、運用を引き締める姿勢を示す狙いがあるとみられます。生活保護と永住許可の両方で、経済的に自立できるかどうかを重く見る方向がそろっています。

推測のもとにした事実

入管と福祉事務所

なぜ「呼び寄せてから夫婦で受給」が通りにくいのか

推測配偶者の在留資格は入管が、生活保護は自治体の福祉事務所が判断し、窓口が分かれています。2010年の大阪の事例は、入管の審査を通った人を自治体が断れなかったことが問題になりました。その後、入管は生計の審査を厳しくし、自治体は入管に出した資料を確認できるようにして、二つの窓口の間のすき間を埋めたと読めます。

推測のもとにした事実

世の中の声

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 外国人の生活保護は法律上の権利ではなく、1954年の通知にもとづく行政措置であること
  • 受給者の在留資格や利用の実態を、国がきちんと把握する必要があること

意見が分かれている点

  • 行政措置の対象となる在留資格を狭めるべきか
  • 病気などで働けなくなった、永住者以外の外国人をどこまで支えるか

今後の注目点

  • 2027年6月からのマイナンバーを使った在留資格の確認と、国の統計の見直し
  • 行政措置の対象の見直しについて、厚労省が具体案を示すか

生活保護を受けている外国人が母国の配偶者を呼び寄せ、夫婦で受給するのは、制度の上では難しいといえます。配偶者の在留資格の審査で呼び寄せる側の収入や納税の証明が求められ、仮に来日できても、入国間もない外国人の申請には入管に出した生計の資料が必要です。2010年の大阪の事例は事実ですが、その後、申請の扱いや入管の審査は厳しくなりました。 見直しを求める立場は、利用実態がつかめていない今の制度では悪用を防げないと考えます。維持を求める立場は、受給者の割合は小さく、生活に困った人を国籍で切り捨てるのは人道に反すると考えています。

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