「ふるさと住民」登録、2027年3月スタートへ 地方の担い手づくりか、第2のふるさと納税競争か
住んでいない地域とも継続的に関わる人を「ふるさと住民」として登録する国の制度が、2027年3月に始まる見通しになりました。地域の担い手確保や二地域居住の後押しに期待する声と、自治体間の獲得競争や事務負担を心配する声をまとめました。

この記事のポイント
- 「ふるさと住民登録制度」は、住んでいる場所以外の地域に、観光や帰省、ボランティアなどで継続的に関わる人を、自治体に登録できる仕組みです。誰でも無料で、スマホのアプリから登録できます。住民票を移す必要はありません。
- 総務省は2027年3月に制度を始める方針を決めました。石破前政権が創設を打ち出し、「関係人口」を10年間で実人数1000万人、延べ1億人に増やす目標を掲げています。
- 自治体の参加は任意で、総務省の調査では74%の自治体が参加に前向きでした。一方、消極的な自治体からは事務負担や財政負担を心配する声が出ています。
- 期待されるのは地域の担い手確保や人の流れづくりですが、ふるさと納税の返礼品競争のように、自治体が登録者を奪い合う「支援策競争」になるのでは、という懸念も指摘されています。
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読者アンケート・回答 件※ 統計的な世論調査ではありません。
① 何が起きているのか
どんな制度?
| ベーシック登録 | プレミアム登録 | |
|---|---|---|
| 対象 | 誰でも(要件なし) | 年3回以上、地域の「担い手活動」に参加する人 |
| 登録できる数 | 上限なし | 3自治体まで(住んでいる自治体は除く) |
| 本人確認 | 不要(マイナンバーカードは任意) | マイナンバーカードで必須 |
| 更新 | 不要 | 原則1年ごと |
- 登録はスマホの「ふるさと住民アプリ(仮称)」から。無料で、出身地や過去の居住歴は問われません。
- 住民票を移す必要はなく、住民票とは別の仕組みです。
- 特典は自治体ごとに決めます。例として、祭りやイベントへの招待、公共施設を住民と同じ条件で使えること、移動・宿泊の補助、災害時の避難の受け入れなどが挙がっています(プレミアム登録者には宿泊費や交通費の補助も可能)。
- 「登録しただけ」でもらえる返礼品は禁止されています。
これまでの流れ
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年6月 | 地方創生2.0基本構想を閣議決定。「関係人口を10年で実人数1000万人、延べ1億人」 |
| 2025年度補正予算 | システム構築に32.1億円、モデル事業に3.5億円 |
| 2026年3月 | ガイドラインを公表。モデル事業に7道県・21市町村を選定 |
| 2026年10月10日 | 総務省が2027年3月に制度を始める方針と判明 |
| 2026年10月16日〜 | 試用版アプリでのモニター実証 |
| 2027年3月 | 制度開始(予定) |
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
期待する立場の意見
人口減少や高齢化で、郷土芸能の担い手不足や空き家の急増などの課題は年々深刻になっています。地域を支える人材を外から引き込む努力が欠かせません。特に、年3回以上地域の活動に参加する「プレミアム登録」が広がれば、地域を維持する仕組みづくりや、地方への人の流れを加速させる鍵になり得ます(秋田魁新報)。
制度は、これまで見えにくかった「関係人口」を見える形にするもので、意義が大きいと考えます(伊東良孝・前地方創生相)。アプリにデータが蓄積されれば、観光事業者などの民間サービスが生まれることも期待できます(総務省の恩田馨・地域力創造審議官)。
都市と地方を「かき混ぜる」ことが鍵です。登録を移住や二地域居住につなげる工夫と、丁寧な周知が必要です(公明党の庄子賢一・総務部会長)。研究機関の全国調査でも、回答した自治体の多くが制度を「評価する」と答えています。
懸念する立場の意見
自治体同士が登録者を奪い合い、ふるさと納税の返礼品競争と同じように、登録者への支援策の競争に陥りかねません(秋田魁新報)。自治体が登録者の数を競うようなゆがんだ制度にならないよう、慎重な制度設計が必要です(日本経済新聞)。
関係人口には「見えづらい・離れがち・混ざらない」という難しさがあります。登録制度は前の2つには効きますが、地元の住民と「混ざらない」問題は残ります。数だけで評価されれば自治体同士の数の競争になりかねず、登録後の対応を自治体だけの仕事にしてはいけません(明治大学の小田切徳美教授)。
参加に消極的な自治体からは、事務負担と財政負担の重さを心配する声が出ています。国がシステムの運用費を負担するのは2027年度までで、それ以降の自治体の負担は「今後検討」とされています。モデル事業に参加した鳴門市も、宿舎の準備や送迎を市が担っているため受け入れの拡大には限界があると話しています。
先行例から見えること
民間シンクタンクの構想日本が2015年に提唱した「ふるさと住民票」は、2025年3月時点で15市町村が導入し、約8300人が登録しています。導入した自治体からは、登録者によって地域への熱量に差があるとの声や、現役世代にとってのメリットが乏しいとの指摘も出ています(東京新聞)。
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
政府(石破前政権→高市政権)
前政権の看板政策、引き継ぎの熱量は?
推測制度は石破前政権が「地方創生2.0」の柱として打ち出したものです。高市政権では、地方創生を担う大臣が総務相との兼務となり、「地域未来戦略」に軸足が移ったとの見方もあります。制度は予定どおり進んでいますが、政権としてどこまで力を入れるかは、2028年度以降の自治体負担をどうするかなどで見えてくるかもしれません。
推測のもとにした事実
- ・共同通信は、制度を「石破前政権が創設を表明」したものと報じたYahoo!ニュース(共同通信)(10/10)
- ・国がシステムの運用費を負担するのは2027年度までとされているトラベルボイス(ガイドラインの内容)(3/27)
自治体
「乗り遅れたくない」が参加の動機?
推測74%の自治体が参加に前向きなのは、制度への期待に加えて、2027年度までは国が費用を負担することや、他の自治体に後れを取りたくないという心理も働いているのかもしれません。ふるさと納税でも、自治体間の競争が過熱した経緯があります。
推測のもとにした事実
- ・2027年度までに参加する団体には一定期間負担を求めない一方、それ以降の負担は「今後検討」とされている内閣官房(総務省資料)(12/17)
- ・総務省の調査で、74%の自治体が参加に前向きだったYahoo!ニュース(共同通信)(10/10)
民間企業
新たな「市場」としての期待
推測ふるさと納税では、仲介サイトなどの民間事業者が大きな役割を担うようになりました。今回の制度でも、旅行・ポイント事業を持つ企業が自治体と連携し、登録者向けの特典を打ち出しています。総務省は、プレミアム登録者に限って、登録先を訪れるための航空券などを返礼品にできるよう税制の見直しも求めています。制度が地域の担い手づくりと民間のビジネスのどちらに傾くかは、今後の運用次第と言えそうです。
推測のもとにした事実
- ・楽天グループは、上士幌町など6自治体と連携し、ふるさと住民に旅行クーポンを提供すると発表した楽天グループ(プレスリリース)(7/1)
- ・総務省は2027年度税制改正要望で、プレミアム登録者向けの航空券等の返礼品の要件見直しを求めた総務省(税制改正要望)
世の中の声
世論調査
制度そのものについての一般向けの世論調査は、確認できた範囲では見当たりませんでした。自治体向けの調査では、総務省の調査(2026年6〜7月、1788団体)で74%にあたる1327団体が参加に前向きでした。国土交通省の調査(2023年度)では、18歳以上の2割強にあたる約2263万人が、住んでいない地域と継続的に関わる「関係人口」と推計されています。
Yahoo!ニュース(共同通信)
SNSの反応
期待する立場寄りの声
二つの地域で暮らしている身としては、住む場所だけで地域との関わりを区切らない考え方はうれしい。登録の数を増やすだけでなく、また会いたい人ができるきっかけになってほしい
年に何度も通っている県があるので、そこの「ふるさと住民」になりたい。応援している気持ちを形にできるのはいいと思う
懸念する立場寄りの声
ふるさと納税では、返礼品を扱う会社が大きく伸びた。ふるさと住民では、結局どこにお金が流れるのかが気になる
どんな制度なのか、いまひとつよく分からない。地域が良くなる未来がまだ見えてこない
集め方:X(旧Twitter)で「ふるさと住民」(いいね20件以上・話題順)と、「ふるさと住民 OR 関係人口」(新しい順)で検索し、2026年6月〜10月11日の日本語投稿を確認しました。制度の開始が報じられて間もないため、反応はまだ多くありません。期待・懸念の双方の投稿がありました
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- 人口減少が進む地方で、地域を支える人を外から呼び込む必要があること
- 自治体同士が登録者の数や特典を過度に競い合うのは避けるべきこと
意見が分かれている点
- 登録者の「数」を増やすことが、本当に地域の担い手づくりにつながるか
- 自治体の事務負担や、2028年度以降の費用負担をどうするか
- ふるさと納税や民間サービスとどこまで結びつけるべきか
今後の注目点
- 10月16日から始まる試用版アプリでのモニター実証の結果
- 2027年3月の本格開始時に、どれだけの自治体が参加し、何人が登録するか
- 航空券などを返礼品にできるようにする税制改正要望の行方
- 2028年度以降の自治体の費用負担の方針
地方を支える人を外から呼び込む必要があるという点では、期待する側も懸念する側も一致しています。対立の中心は、登録という「入り口」が、本当に地域と深く関わる担い手づくりにつながるかどうかです。 期待する側は、関係人口を見える形にすることで地方への人の流れが生まれると考え、懸念する側は、ふるさと納税のような自治体間の競争や、数だけを追う運用を心配しています。制度の中身の多くは自治体の工夫に委ねられており、始まってからの運用が問われます。
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