両論ニュース
内政(更新 2026年10月24日)

「副首都」の指定要件案、満たすのは4道府県だけ 災害に備えた妥当な線引きか、「大阪ありき」か

政府が示した「副首都」の指定要件案を満たすのは、北海道・愛知・大阪・福岡の4道府県にとどまり、要件に届かなかった広島県の知事は「納得できない」と見直しを求めました。要件は妥当だとする政府・維新側と、線引きの根拠が不透明だと批判する地方や野党の主張をまとめました。

大阪・中之島のビル街
大阪・中之島写真:Mc681 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
結果2026年10月23日:副首都構想関連法、30日に施行へ 要件の政令は来週にも↓

この記事のポイント

  • 7月に成立した副首都法(国家社会機能継続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律)は、大規模災害の時に東京圏の行政・経済機能を代わりに担い、東京一極集中を是正することを目的にしています。自民・維新が共同で出した議員立法で、参院では賛成123、反対121の2票差で成立しました。
  • 政府は10月3日、副首都に指定するための要件案を示し、意見募集を始めました(16日まで)。首都直下地震や富士山噴火の警戒地域の外にあること、全国人口の1.2%以上(約150万人)の政令市があること、県内総生産が国内総生産の2.1%以上あることなどが盛り込まれ、すべてを満たすのは北海道・愛知・大阪・福岡の4道府県とみられています。
  • 要件に届かなかった広島県の横田美香知事は9日、総務省を訪れ「一部納得できない」として、数値の根拠を示すことや、全国の地域バランスへの配慮を求めました。
  • 政府は「大阪ありきではない」と説明しています。一方、地方紙の社説や野党からは、専門家の議論を経ずに決めた線引きで、南海トラフ地震も考慮されていないといった批判が出ています。

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※ 統計的な世論調査ではありません。

① 何が起きているのか

副首都の指定要件案(主なもの)

  1. 立地:首都直下地震の緊急対策区域と、富士山の火山災害の警戒地域のどちらにも当たらない
  2. 行政:国の出先機関(地方支分部局)が一定数以上ある市町村を持つ
  3. 人口:全国人口の1.2%以上(約150万人)の政令指定都市を持つ
  4. 経済:道府県内の総生産が、国内総生産の2.1%以上
  5. 行政体制:特別区を設置するか、道府県と政令市が連携協約を結んで推進体制をつくる

→ すべてを満たすのは、北海道(札幌)・愛知(名古屋)・大阪(大阪)・福岡(福岡)の4道府県とみられています。

届かなかった主な地域

地域 主な理由(分析・報道による)
広島県 広島市の人口約117万人が基準に届かない。県内総生産も2.094%でわずかに不足
宮城県 仙台市の人口が基準に届かない
兵庫県・京都府 神戸市・京都市の人口が基準をわずかに下回る
群馬県 政令市がない
埼玉・千葉・神奈川 首都直下地震の緊急対策区域に当たる

これまでの流れ

時期 出来事
2025年10月 自民・維新の連立合意に副首都構想
2026年7月24日 副首都法が参院で成立(賛成123、反対121)
10月3日 政府が指定要件案を公表し、意見募集を開始(16日まで)
10月9日 広島県知事が総務省に見直しを要望
10月末めど 政令を公布
11月 「基本方針の考え方」を示す予定

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

要件案を妥当とする立場の意見

  1. 要件は大阪ありきではなく、災害時のバックアップと東京一極集中の是正という観点から検討しています。指定する都市は複数を考えています(藤井比早之総務相)。

  2. 首都と同時に被災しない地域であることは当然で、人口にも一定の集積が必要です。要件案は妥当です。大事なのは指定を競うことではなく、どんな副首都を目指すかという中身で、「ミニ東京」ではなく個性をもって成長する環境をつくりたい(吉村洋文・大阪府知事、日本維新の会代表)。国会審議でも維新側は、東京圏を代わりに担える都市はある程度限られると説明しています。

  3. 要件を満たす4道府県は、候補として「おおむね妥当」です。ただし、今回の要件はあくまで「エントリー要件」で、インフラの強さなどは追加で評価すべきであり、拙速は避けるべきです(日本総合研究所の若林厚仁氏)。要件を満たす福岡県の関係者も、政令案を「福岡が副首都に入ることを意識した素案だ」と評価しています。

要件案を批判する立場の意見

  1. 広島県は副首都としての適性を持っていると考えます。要件案には一部納得できない面があり、人口や経済の数値要件の意味を示してほしい。東北や中四国など副首都の候補がない地域も考慮した、全国的な地域バランスへの配慮が必要です(広島県の横田美香知事)。群馬県の山本一太知事も、要件が定量的なものばかりで、もっと多角的に議論すべきだと述べています。

  2. 人口で線を引く根拠が不明確で、恣意的ではないでしょうか。南海トラフ地震も考慮されておらず、専門家を交えた検討会もないまま閉じた場で決められました(中国新聞)。専門家の検討会もなく与党の密室協議で決まった「不透明な大阪優遇」で、新たな一極集中を招くおそれもあり、費用も分かりません。制度設計をやり直すべきです(京都新聞)。

  3. 法案審議の段階から、野党は「当てはまるのは限りなく大阪しかない」(中道改革連合)、「副首都とは何かを決める前に指定できるのはおかしい」と批判してきました。立憲民主党は、大阪に有利な要件であることや、南海トラフ地震が想定されていないこと、費用対効果が不明なことを挙げて廃案を求め、国民民主党も「設計図がないまま契約を求めるようなものだ」と批判しました。

国の判断を尊重する立場

  1. 要件を満たさない県の中にも、受け止めが分かれています。宮城県の村井嘉浩知事は、国家の危機管理や安全保障の観点から国の判断を尊重したいとの考えを示しました。

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

日本維新の会

連立の「絶対条件」と都構想の追い風

推測副首都は、維新が自民党との連立で「絶対条件」と位置づけてきた政策です。大阪では、大阪市を特別区に再編する都構想の3度目の住民投票に向けた議論も進んでいます。国が副首都の受け皿を法律で定義し、大阪が要件を満たすことになれば、都構想を進めるうえで「副首都にふさわしい体制を」という主張の後押しになるとの見方もできます。

推測のもとにした事実

政府・自民党

「複数指定」で大阪色を薄める?

推測法案の段階で、自民党内には「大阪ありき」への懸念が根強く、特別区の設置は必須要件から外されました。要件案で4道府県が該当するように線を引き、総務相が「複数を考えている」と強調するのは、大阪だけのための制度だという批判をかわす狙いもあるのかもしれません。

推測のもとにした事実

要件に届かなかった地域

「はしごを外された」地方の焦り

推測副首都に指定されれば、国の機関の拠点整備や企業の本社移転への税優遇など、地域に大きな恩恵が見込まれます。広島県は県内総生産の基準にわずかに届かない水準とされ、知事が同じ日に防災庁の地方機関の誘致も提案したと報じられています。副首都の指定から外れることで、地域間の格差が広がることへの危機感がうかがえます。

推測のもとにした事実

世の中の声

世論調査

  • 今回の要件案について聞いた世論調査は、確認できた範囲では見当たりませんでした。法律の成立直後の共同通信の調査(2026年7月25〜26日)では、国会での議論が「不十分」との回答が66.9%で、自民支持層でも52.4%が「不十分」と答えました。

    山陰中央新報(共同通信世論調査)

SNSの反応

要件案を妥当とする立場寄りの声

  • いざという時に首都の機能を代わりに担える場所は必要だと思う。東京だけに頼らない、多極型の国づくりにつなげてほしい

  • これまで「副首都」はスローガンのようなものだったけれど、国が法律で受け皿をはっきり定義したのは大きな前進だと思う

要件案を批判する立場寄りの声

  • 要件に「人口150万人以上の政令市があること」とあるのに、大阪市を特別区に分ける都構想が実現したら、その要件はどうなるのか。筋が通っていない気がする

  • 物価が上がって生活が苦しいのに、副首都の法律を急ぐのは優先順位が違うと思う

集め方:X(旧Twitter)で「副首都」×「要件 OR 広島 OR 大阪ありき」(いいね30件以上・話題順)、「副首都」×「いらない OR 必要 OR 賛成 OR 反対 OR 災害」(いいね50件以上)、「副首都」×「首都直下 OR 一極集中 OR 複数 OR 福岡 OR 名古屋」(いいね20件以上)で検索し、2026年9月15日〜10月10日の日本語投稿を確認しました。報道を紹介する投稿が多く、賛否を述べる投稿は双方ありました。特定の政治家や団体への中傷を含む投稿は除いています
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 大規模災害に備えて、東京の機能を代わりに担える体制が必要なこと
  • 首都直下地震などで東京と同時に被災しない地域であるべきこと

意見が分かれている点

  • 人口や経済規模で線を引く要件は妥当か、根拠は十分か
  • 南海トラフ地震のリスクを要件に含めるべきか
  • 副首都を少数の大都市に絞るべきか、地域バランスを重視すべきか
  • 専門家の議論や国会の関与を経ずに要件を決めてよいか

今後の注目点

  • 意見募集(10月16日まで)の結果と、10月末をめどとする政令の公布
  • 要件が見直されるかどうか
  • 11月に示される「基本方針の考え方」と、副首都の指定時期
  • 大阪都構想の住民投票の日程と、副首都の指定との関係

大規模災害に備えて東京の機能を代わりに担える体制が必要だという点では、各立場の考えに重なりがあります。対立の中心は、その副首都をどう選ぶかという線引きの妥当性です。 政府や維新は、首都と同時に被災しないことや一定の都市規模が必要だとして要件案を妥当とし、批判する側は、数値の根拠や南海トラフ地震への備え、決め方の透明性を問題視しています。政令の公布に向けて、要件が見直されるかが焦点です。

④ その後どうなった?

この記事の公開後に出た結果や、大きな動きを追記しています。

  1. 総務相、基本方針づくりへ「有識者を含め幅広く意見を聞く」

    藤井比早之総務相は10月13日の記者会見で、来年10月をめどにまとめる副首都整備の基本方針に向けて、有識者から意見を聞く考えを示しました。政府は要件案を作る際に有識者の検討会を設けておらず、検討会を設けるかどうかは決まっていません。藤井氏は「有識者を含め幅広く意見を聞きたい」と述べました。 要件に届かなかった広島県の横田美香知事は、改めて「納得できない」とし、政府に「幅広い関係者による丁寧な議論を進めてほしい」と求めています。

  2. 副首都構想関連法、30日に施行へ 要件の政令は来週にも

    政府は23日の閣議で、副首都構想関連法を30日に施行すると決めました。道府県の中に全国人口の1.2%以上の政令指定都市があることなどを指定の要件とする政令を、来週にも定めます。北海道、愛知、大阪、福岡の4道府県が当てはまる見通しです。 施行後は、要件を満たす道府県の申し出を受けて首相が副首都を指定します。政府は指定までの日程を、副首都のあり方の基本的な考え方とあわせて11月中に示すとし、副首都整備の基本方針は来年10月をめどにまとめます。

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