大阪都構想、三たび住民投票へ 「3度目の正直」か「勝つまでジャンケン」か
2015年と2020年の住民投票でいずれも僅差で否決された大阪都構想が、3度目の住民投票に向けて動いています。法定協議会では区割りや区の名前の議論が進み、来春の知事選と同じ日の投票をめぐっても対立が続きます。推進する維新と、反対・慎重派、それぞれの主張をまとめました。

大阪都構想、3度目の住民投票にかけるのは妥当?
- 過去の住民投票
- 2回とも否決
- 特別区の税収の差
- 1.1倍以内に調整
- 推進派の目標
- 2027年春の知事選と同日
推進派
二重行政をなくし、府と市が一つになって大阪を成長させる
反対・慎重派
2度の否決という民意がある。府と市の連携で十分できる
- どちらも認めていること
- 大阪の成長が重要な課題であること、最後は大阪市民が判断すること
- 次の焦点
- 12月上旬の協定書のとりまとめと、住民投票の日程
この記事のポイント
- 大阪都構想は、大阪市を廃止して東京23区のような「特別区」に再編し、広域の仕事を大阪府に一元化する構想です。2015年と2020年の住民投票は、いずれも反対が約50.4〜50.6%の僅差で否決されました。
- 吉村洋文知事と横山英幸市長は1月に辞職し、2月の出直し選で再選されたことを受けて、3度目の挑戦に踏み出しました。府議会・市議会が法定協議会の設置を可決し、8月に区割り(4区)、9月に府と特別区の仕事の分担などが決まりました。12月上旬に制度案(協定書)をまとめる方針です。
- 吉村知事は、2027年春の知事選と同じ日に住民投票を行うことを目指しています。一方、7月に成立した副首都法の付帯決議は、住民投票と地方選挙が重ならないよう求めています。
- 自民党・公明党の大阪の議員団は法定協議会に参加しておらず、主要な全国紙の社説も、3度目の挑戦や進め方に批判的・慎重な論調が目立ちます。
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読者アンケート・回答 件※ 統計的な世論調査ではありません。
① 何が起きているのか
大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」が、3度目の住民投票に向けて動いています。
都構想とは
| 今 | 都構想が実現すると | |
|---|---|---|
| 大阪市 | 政令指定都市として存続 | 廃止され、4つの特別区に再編 |
| 広域の仕事(都市計画、主要インフラなど) | 府と市がそれぞれ担当 | 大阪府に一元化 |
| 身近な仕事(福祉、子育てなど) | 大阪市(24の行政区) | 各特別区(今の区役所も窓口として残る計画) |
過去2回の住民投票
| 投票日 | 賛成 | 反対 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2015年5月17日 | 69万4844票 | 70万5585票(50.38%) | 否決(5区案) |
| 2020年11月1日 | 67万5829票(49.37%) | 69万2996票(50.63%) | 否決(4区案) |
これまでの流れ(2026年)
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1月 | 吉村知事と横山市長が辞職し、都構想への再挑戦を掲げて出直し選に |
| 2月8日 | 衆院選と同じ日の出直し選で、2人とも再選(無効票は知事選で10%超) |
| 5〜6月 | 市議会・府議会が法定協議会の設置を可決。自民党・公明党などは法定協に参加せず |
| 7月24日 | 副首都法が参院で2票差で成立。付帯決議で、住民投票と地方選挙が重ならないよう求める |
| 8月7日 | 法定協議会が区割りを4区に決定(1区あたりの人口は約53万〜88万人) |
| 9月 | 府と特別区の仕事の分担、区の間の税収の調整(差を1.1倍以内に)、区議会の定数(4区で計70人)を決定 |
| 10月10日 | 維新が特別区の名前の候補を、区ごとに2案に絞り込み |
| 11月初め(予定) | 法定協議会に区の名前を提示 |
| 12月上旬(予定) | 制度案(協定書)のとりまとめ |
| 2027年春(目標) | 住民投票(吉村知事は知事選と同日を目指す) |
協定書が府議会と市議会で承認されると、60日以内に大阪市民を対象とした住民投票が行われます。賛成が過半数なら、大阪市は廃止され特別区が設置されます。
副首都との関係
7月に成立した副首都法は、大災害で東京が被災したときに首都の機能を代わりに担う「副首都」を、国が指定できるようにする法律です。政府が10月に示した指定要件の案では、「特別区の設置」か「府と政令市の連携協約」のいずれかが条件とされ、都構想が実現しなくても副首都に指定される道が開かれています。
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
推進派の意見
大阪府と大阪市が一つになって強力な自治体をつくれば、大阪はもっと成長できると訴えています。副首都として東京の機能を代替する行政体制には、都構想が最も適しているとしつつ、府と市の連携協約による方法も排除しないとしています(吉村知事)。
府と市が別々に仕事をする「二重行政」を解消し、都市整備などの広域の仕事は府に集約、住民に身近な仕事は特別区が担います。法定協議会では、万博跡地など主要拠点の整備は府が主導し、区ごとの税収の差は1.1倍以内に調整する仕組みが決まりました。
横山市長は「スピード感を持って」知事選との同日実施を目指すと答弁しています。維新の岩谷良平衆院議員は、副首都法は特別区設置の手続きを変えておらず、今の大都市法でも住民投票は選挙と同時に行えると反論しています。
反対・慎重派の意見
2度の住民投票で示された民意は何だったのか。吉村知事は2度目の否決の後、再挑戦はしないと語っていました。住民投票には毎回十数億円の経費がかかっており、何度も繰り返せば府民の信頼を失いかねません(読売新聞)。朝日新聞も、副首都法と都構想を強引に結びつけようとする「姑息な手段」だと批判しています。
府と市の一体運営は、維新が知事と市長を握ることですでに実質的に行われています。住民はそれを一定程度評価しており、あえて大阪市を廃止するまでもないというのが過去の判断だったのでしょう。過去の制度案づくりは2〜3年かけており、拙速は否めません。知事選との同時投票は、公職選挙法上、住民投票の運動が制約される問題もあります(日本経済新聞)。
自民党大阪府連の松川るい会長は、府と市の連携協約で年内にも副首都を目指すべきだとし、同日実施を目指す吉村知事の発言を「残念」と批判しています。公明党の議員は、住民投票の結果を真摯に受け止めるべきだとして法定協議会に参加していません。大阪経済大学の柏原誠准教授は、進め方は拙速で、2度の否決を軽視していると指摘しています。
「住民投票の日程」を問題視する立場
副首都法の審議では、都構想の住民投票と統一地方選の同日実施が最大の焦点になりました。野党は、同じ日になれば賛成・反対を訴える活動に公職選挙法の制約がかかると懸念し、付帯決議に「重ならないよう最大限調整」との文言が入りました。国民民主党の玉木代表は、それでも同日実施を目指す吉村知事の姿勢を「国会軽視も甚だしい」と批判しています。
副首都と「都」の呼び方を問う立場
副首都法には、特別区を設ける道府県は「都」に名称を変えられる規定が盛り込まれました。産経新聞は、副首都の具体化を急ぐよう求める一方で、天皇陛下が住まわれる皇居のある東京以外を「都」と呼ぶことには疑問を示しています。毎日新聞は、連携協約でも副首都の指定が可能になる以上、都構想の必要性は根拠を失うのではないかと指摘しています。
Xの発信
吉村洋文・大阪府知事:来春の統一地方選と同じ日の住民投票を目指すとし、実現のハードルは「めちゃくちゃ高い」が、乗り越えた先に新しい大阪の未来があると訴えた
吉村洋文・大阪府知事のXの投稿を見る ↗
公明党大阪市会議員団:市議会の委員会で、副首都の実現に大阪市の廃止は必要なのか、特別区でなければできない具体的な仕事は何かとただし、市は「その観点で整理したものではない」と答えたと紹介した
公明党大阪市会議員団のXの投稿を見る ↗
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
吉村知事・維新
なぜ「知事選と同じ日」にこだわるのか
推測過去2回の住民投票は単独で行われ、いずれも1〜2万票ほどの僅差で否決されました。知事選と同じ日にすれば投票率が上がり、知事選で維新を支持する層がそのまま住民投票に足を運ぶ効果が見込めます。一方、反対派からすれば、選挙運動の規制で反対の訴えがしにくくなる日程です。どちらにとっても、日程そのものが勝敗を左右しかねない重要な要素になっています。
推測のもとにした事実
- ・2020年の住民投票は賛成67万5829票、反対69万2996票で、差は約1万7000票だった日本経済新聞(2020年の住民投票)
- ・同日実施の場合、公職選挙法上、住民投票の運動が制約される問題があると指摘されている日本経済新聞 社説(6/5)日本経済新聞(副首都法の成立)(7/24)
維新
国政の「副首都法」を都構想の追い風に?
推測連立与党に加わった維新は、副首都法の原案に、都構想の住民投票を大阪市民だけでなく府民全体に広げられる規定を盛り込みました。市の税収を府全体に回す都構想には、大阪市外の府民の方が賛成しやすいとみたのでしょう。この規定は自民党の求めで削除されましたが、国政での立場を地元の悲願に結びつけようとする動きは、批判を浴びることにもなりました。
推測のもとにした事実
- ・副首都法の原案には、住民投票の範囲を府全域に広げられる付則が入っていた時事通信(副首都法案の原案)(5/29)
- ・自民党総務会が、府全域での住民投票を可能にする付則を削除する修正を了承した熊本日日新聞(共同・付則の削除)(6/23)
自民党
本部は「協力」、大阪は「反対」のねじれ
推測自民党本部は連立相手の維新と副首都法を共同で提出しました。ところが大阪の自民党は都構想に反対し、法定協議会にも参加していません。大阪府連は「連携協約」で副首都を目指す別の道を推しています。地元では維新と議席を争うライバルである以上、都構想の実現は避けたい――国政の連立と地元の対立がねじれたまま、住民投票に向かっています。
推測のもとにした事実
- ・自民大阪府連の松川会長は、連携協約による副首都の早期指定を主張し、同日実施を目指す吉村知事の発言を批判した熊本日日新聞(共同・自民大阪府連)(7/26)
- ・政府の指定要件の政令案では、「特別区の設置」と並んで「府と政令市の連携協約」も要件として認められた時事通信(副首都の政令案)(10/3)
公明党
「常勝関西」立て直しへの立ち位置
推測公明党は大阪で、住民投票の結果を重んじる立場から法定協議会に参加せず、市内各地でタウンミーティングを重ねています。自民党との連立を離れ、中道改革連合の分裂も経て党を立て直すなかで、都構想に反対する人々の受け皿になることで、大阪での存在感を取り戻したいという計算もあるのかもしれません。
推測のもとにした事実
- ・公明党は法定協議会に参加せず、7月下旬から9月初めにかけて大阪市内16か所でタウンミーティングを開いたJ-CAST(公明党の動き)(7/26)
維新内部
都構想は維新の「存在意義」
推測都構想は、大阪維新の会が結党以来掲げてきた看板政策です。維新の市議団は当初、法定協議会の早期設置に慎重でしたが、吉村知事が来春の知事選に出馬し、今の任期中に都構想の実現を目指すと表明したことで賛成に転じたと報じられています。3度目も否決されれば、党の求心力に大きく響くのは避けられません。維新にとっては、文字どおり「後がない」挑戦と言えます。
推測のもとにした事実
- ・吉村知事は、来春までの住民投票を条件に知事選に出馬する意向を示し、「今の任期で都構想実現を目指す」と述べた秋田魁新報(共同・吉村知事の出馬意向)(5/17)
- ・維新の市議団は、その後、法定協議会の設置議案に賛成することを決めた秋田魁新報(共同・維新市議団の決定)(5/20)
世の中の声
SNSの反応
推進寄りの声
災害もインフラも、市の境を越えて起きる。広域の仕事を府に一つにまとめれば、大阪全体で一体的に進められると思う
特別区になっても、今の24の区役所は残る計画。住民票などの身近な手続きが不便になるわけではない
大阪が東京と並ぶ「都」になる好機だと思う。住民投票では賛成したい
反対・慎重寄りの声
2回も住民投票で否決されたのに、いったい何回やるのかと思う
市民サービスが確実に良くなるなら、住民投票は要らないはず。不利益があるかもしれないから問うのではないか
大阪市を4つに分けて、役所の仕組みを大がかりに作り直すのは不安が大きい
集め方:X(旧Twitter)で「都構想 OR 副首都」(いいね50件以上・話題順)と、「都構想」×「3度目 OR 反対 OR 住民投票 OR 大阪市廃止 OR 賛成」(いいね20件以上)で検索し、2026年7月〜10月10日の日本語投稿を確認しました。推進側の投稿は維新の議員による制度の解説が中心でした。2026年に都構想の賛否を尋ねた報道機関の世論調査は、確認できた範囲では見当たりませんでした
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- 大阪の成長や、府と市の役割分担のあり方が重要な課題であること
- 住民投票は大阪市民の判断で決まり、その結果は重く受け止めるべきだということ(府民全体への拡大は見送られました)
- 制度案の中身を、住民に丁寧に説明する必要があること
意見が分かれている点
- 2度否決された都構想を、3度目の住民投票にかけることが妥当か
- 大阪市を廃止して特別区に分けるべきか、府と市の連携協約などで十分か
- 住民投票を知事選と同じ日に行ってよいか
今後の注目点
- 11月の法定協議会での特別区の名称の決定と、12月上旬の協定書のとりまとめ
- 府議会・市議会での協定書の採決と、住民投票の日程
- 10月下旬に決まる副首都の指定要件の政令と、大阪の申請
- 2027年春の大阪府知事選・大阪市長選
大阪をもっと強くしたいという思いは、推進派にも反対派にも共通しています。分かれているのは、そのために「大阪市をなくして特別区に分ける」必要があるのか、という一点です。推進派は二重行政の解消と広域の一元化を、反対派は2度の否決という民意と、連携でも同じことができるという点を強調します。 さらに今回は、住民投票の日程や副首都法との関係といった「進め方」そのものが大きな争点になっています。最終的に判断するのは大阪市民です。協定書の中身が固まる年末に向けて、制度の具体的なメリットとデメリットがどこまで示されるかが問われます。
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