簗氏の「無料送迎」、他党も同じ? 選挙の送迎、どこまで許されるか
簗和生前農相の辞任につながった、支援者の無料送迎の問題。Xでは「共産党や公明党も投票所に送迎している」という投稿が広がっています。簗氏の件で何があったのか、他党をめぐる話はどこまで確認できるのかを整理しました。そのうえで、厳しく問うべきだという立場と、線引きをはっきりさせるべきだという立場の主張をまとめました。
結論:広がっている話は本当?
- 誤り「簗氏は支援者を投票所へ送迎した」送迎したのは衆院選の公示日の出陣式で、臨時駐車場から会場まで(500メートルもない距離)をマイクロバスで運んだものです
- 確認できず「簗氏は事前に選管に確認し「問題ない」とされた」栃木県選管は問い合わせの記録がなく、聞かれても「問題ない」と答えることはあり得ないとしています。簗氏も「計上方法の照会だった可能性」と答弁を修正しました
- 不正確「共産党も投票所への送迎をしていた」共産党の市議2人が2021年に投票所への送迎を呼びかけていた記録はありますが、実際に送迎したかどうかや違法性は確認されていません
- 確認できず「公明党(創価学会)も投票所に送迎している」報道や摘発の例は見つかっておらず、裏付けのない主張です

選挙での送迎、どこまで許される?
- 簗氏の送迎(出陣式・駐車場から会場まで)
- 約500m
- シャトルバス代(2回の衆院選の合計)
- 約42万円
- 「他党も投票所に送迎」の裏付け
- 確認できず
厳しく問う派
有権者を無料で運ぶのは利益供与にあたりうる。どの党であれ、法律にのっとって厳しく問うべき
線引きを求める派
高齢者や交通の不便な地域もある。どこまでが許されるのか、国がはっきり線を引くべき
- どちらも認めていること
- 選挙での送迎のルールが分かりにくく、はっきりさせる必要がある
- 次の焦点
- 宇都宮地検が告発を受理し、捜査するかどうか。総務省が指針を示すかどうか
この記事のポイント
- 簗和生前農相は、2024年10月と2026年2月の衆院選で、公示日の出陣式(栃木県大田原市)の会場と臨時駐車場の間をマイクロバスで往復させ、支援者を無料で運んでいました。選挙運動費用収支報告書には「シャトルバス代」として計約42万円が載っています。
- 栃木県選管は、個人演説会に有権者をバスで運ぶことは公職選挙法が禁じる利益供与に当たるとする総務省の見解を示しています。神戸学院大の上脇博之教授は、簗氏らを宇都宮地検に告発しました。
- Xでは「共産党や公明党も投票所に送迎している」という投稿が広がっています。共産党の市議2人が2021年に投票所への送迎を呼びかけていた記録はありますが、実施や違法性は確認されていません。公明党については裏付けが見つかっていません。
- 共産党が演説会への貸切バスを案内するチラシの画像も拡散していますが、選挙期間外の政党主催の演説会で、往復500円の料金を取るものも含まれます。簗氏の件とは条件が異なります。
みんなは?
読者アンケート・回答 件※ 統計的な世論調査ではありません。
① 何が起きているのか
広がっている話を整理すると
| 広がっている話 | 確認できたこと |
|---|---|
| 簗氏は投票所へ送迎した | 出陣式の臨時駐車場と会場の間(500メートル未満)の送迎です |
| 選管に確認済みだった | 栃木県選管に記録はなく、簗氏も「計上方法の照会だった可能性」と答弁を修正しました |
| 共産党も投票所へ送迎 | 市議2人が2021年に呼びかけた記録はありますが、実施や違法性は未確認です |
| 共産党も演説会にバスを出している | 拡散したチラシには、選挙期間外の政党主催の演説会で往復500円の料金を取るものが含まれます |
| 公明党(創価学会)も投票所へ送迎 | 報道や摘発の例は見つからず、裏付けはありません |
簗氏の送迎問題の経緯
- 2024年10月・2026年1月:衆院選の公示日の出陣式で、支援者をマイクロバスで無料送迎(報告書にシャトルバス代 計約42万円)
- 10月7日:文春オンラインが報道
- 10月13日:衆院予算委で「人道上の観点」「選管に確認した」と説明。選管は記録がないと説明
- 10月14日:答弁を修正し、同じ日に辞表を提出
- 10月15日:上脇博之教授が宇都宮地検に告発状を送付
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
厳しく問う派の意見
栃木県選管は、選挙事務の事例集にある総務省の見解として、個人演説会に有権者をバスで運ぶことは公職選挙法が禁じる利益供与に当たるとしています。事前に聞かれていれば「問題ない」と答えることはあり得ないと説明しています。
神戸学院大の上脇博之教授は、2回の衆院選でそれぞれ約100人を無料で送迎し、計約18万円と約23万円の利益を供与した疑いがあるとして、簗氏と会計責任者を宇都宮地検に告発しました。「厳正な捜査を尽くし、厳重に処罰していただきたい」としています。
選管に記録がない以上、「選管に確認した」という国会答弁は虚偽ではないかと追及されました(山岡達丸・衆院議員)。ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、説明が選管の指摘で崩れたとして、うそはかばいようがないと指摘しています。
線引きを求める派の意見
公共交通がなく高齢者が多い地域で、寒い夜に長い距離を歩かせないための「人道上の観点」からの送迎だったと説明しています(簗和生・前農相)。
公明党の岡本三成代表は、悪質性は低いとしつつ、選管への確認を怠ったのではないかと指摘しています。距離が短く金額も少ないことなどから、ただちに買収と決めつけるのは早計だという見方もあります(平河邦夫氏)。
送迎にはお金がかかり、投票を得る目的があれば買収に当たる可能性がある一方、高齢者や交通の不便な地域での送迎がどこまで許されるのかは分かりにくいのが現状です。総務省がわかりやすい指針を示すべきだという提案があります(大濱崎卓真・選挙コンサルタント)。
Xの発信
玉木雄一郎・国民民主党代表:シャトルバスの無料提供を問題なしと答える選管はないはずだとして、簗氏の説明は虚偽答弁の可能性が高いと指摘した
玉木雄一郎・国民民主党代表のXの投稿を見る ↗
長尾たかし・元衆院議員:支援者が観光バスを連ねて応援に駆けつける光景はよくあるとして、選挙に関わるバスの送迎について全政党を調べてはどうかと投稿した
長尾たかし・元衆院議員のXの投稿を見る ↗
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
「他党も同じ」と訴える人たち
なぜ他党の送迎が持ち出されるのか
推測簗氏への追及が厳しくなるなかで、「簗氏だけが特別ではない」と示して擁護したい思いがあるとみられます。一方で、拡散した材料には、投票所への送迎の呼びかけ、有料の演説会バス、出陣式への無料送迎など、条件の違うものが混ざっています。どれが法律上問題になりうるのかを分けて考える必要があります。
推測のもとにした事実
- ・共産党の演説会の貸切バス(往復500円)や、市議の投票所送迎の呼びかけの画像が拡散したX上で拡散した画像(共産党のチラシ)(10/14)内外タイムス(共産党市議の呼びかけ)(10/15)
- ・簗氏の送迎は出陣式の駐車場と会場の間で、費用は陣営が負担していた大濱崎卓真氏(Yahoo!ニュース エキスパート)(10/9)
世の中の声
SNSの反応
厳しく問う寄りの声
出陣式の会場への送迎より、投票所への送迎のほうがよほど問題だと思う。どの党であれ、同じ基準で調べてほしいと思う
線引きを求める寄りの声
シャトルバスはどこの党でも普通に出ている。簗氏だけを責めるのは不公平だと思う
投票所に行く足がない高齢者もいる。陣営ではなく、選管が送迎の仕組みを整えるべきだと思う
集め方:X(旧Twitter)で「送迎 簗 他の政党」「赤旗 投票所 送迎」「公明 送迎 投票」で検索し、2026年10月8日〜15日の日本語投稿を確認しました。他党も同じことをしているのに簗氏だけが責められているという投稿が多く拡散する一方、投票所への送迎と出陣式への送迎は違うという指摘や、高齢者の足の確保を求める声も見られました
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- 選挙での送迎について、何が許されて何が許されないのかが分かりにくいこと
- どの党であっても、同じ基準で判断されるべきこと
意見が分かれている点
- 簗氏の送迎を、買収・利益供与として厳しく問うべきか
- 高齢者などの足の確保を、陣営に任せるか、選管など公的な仕組みで支えるか
今後の注目点
- 宇都宮地検が告発を受理し、捜査するかどうか
- 総務省が送迎についての指針を示すかどうか
- 選挙運動費用の報告書の見直しなど、ほかの陣営への波及
簗氏の送迎は投票所ではなく出陣式への送迎で、「他党も投票所に送迎している」という話の多くは裏付けが取れていません。送迎のルールが分かりにくいという点では、各立場の見方は一致しています。 厳しく問う派は、選管も示す利益供与の考え方に沿って、どの党であれ厳正に判断すべきだと考えます。線引きを求める派は、悪質性の程度や地域の事情も踏まえ、国が明確な基準を示すべきだと考えています。
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