東京の税収をもっと地方へ回すべきか 「格差の是正」か「地方自治の否定」か
東京都に集まる地方税収を、ほかの道府県に配り直す「偏在是正」の議論が、年末の2027年度税制改正に向けて本格化します。全国知事会などは是正を強く求め、小池都知事は「断固反対」の立場です。是正を進めるべきだとする立場と、反対する東京都側の主張をまとめました。

東京都に集まる税収を、もっと地方に回すべき?
- 地方法人課税に占める都の割合(2023年度)
- 22.5%
- 独自施策に使える財源(1人あたり)
- 都28.1万円・他道府県平均7.8万円
- すでに他の道府県へ回った都税(都の試算)
- 年約1.6兆円
是正推進派
税収の格差が行政サービスの差に。是正は欠かせない
反対派
交付税で調整済み。東京の狙い撃ちは地方自治の否定
- どちらも認めていること
- 地方全体の財源を充実させる必要があること
- 次の焦点
- 年末の2027年度税制改正大綱での結論
この記事のポイント
- 企業の本社が集まる東京都には地方税収が集中しており、2023年度は全国の地方法人課税の22.5%、土地の固定資産税の25.1%を都が占めました。
- 自民・維新の与党は2026年度の税制改正大綱で、法人事業税をさらに配り直す措置などを「2027年度の税制改正で結論を得る」と決めました。土地の固定資産税も初めて検討の対象になりました。
- 全国知事会や、埼玉・千葉・神奈川の3知事は是正を強く求めています。小池百合子都知事は「地方自治の根幹を否定する」として断固反対の立場です。
- 新聞の社説は、日経・朝日・北海道新聞などが是正に理解を示しています。一方、東京都は「地方交付税で調整済みで、是正すべき偏在はない」と反論しています。
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読者アンケート・回答 件※ 統計的な世論調査ではありません。
① 何が起きているのか
そもそも「偏在是正」とは
企業の本社が多い東京都には、法人にかかる地方税(法人事業税・法人住民税)が集まりやすくなっています。国はこの税の一部を国税にして、ほかの道府県に配り直す措置を重ねてきました。
| 年度 | 主な措置 |
|---|---|
| 2008年度 | 法人事業税の一部を国税化(地方法人特別税、暫定措置) |
| 2014年度 | 法人住民税の一部を地方交付税の原資に(2016年度に拡大) |
| 2019年度 | 特別法人事業税・譲与税をつくり、恒久的な制度に |
| 2027年度(予定) | 法人事業税の配り直しを拡大する措置を検討。結論は年末の税制改正大綱で |
数字で見る東京と地方
- 地方税収に占める東京都の割合(2023年度):全体の17.6%、地方法人課税の22.5%、土地の固定資産税の25.1%(総務省・地方財政審議会)
- 独自施策に使える財源(住民1人あたり、総務省の推計):都28万1千円、ほかの道府県平均7万8千円
- 一般財源(地方税+交付税など、住民1人あたり):都23万8千円、全国平均22万9千円(北海道新聞の社説による)
- 都がほかの道府県に回した税収(都の試算):2026年度だけで約1.6兆円、2008年度以降の累計で約12.6兆円
国は「独自施策に使える財源」の差を、東京都は「一般財源」がほぼ全国並みであることを、それぞれ根拠にしています。
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
是正推進派の意見
東京と地方がともに成長するためには、極端な税源の偏在の是正が必要不可欠です(宮下宗一郎・青森県知事、7月の全国知事会議)。全国知事会は「税源の偏在性が小さく、税収が安定した地方税の体系」を目指すべきだとする提言をまとめ、総務相や財務相、与党に届けました。東京に隣接する埼玉・千葉・神奈川の3知事も、6月に官房長官へ是正を申し入れています。
ネット通販の広がりなどで、企業の拠点が集まる東京に税収が集中する構造ができています。総務省の推計では、独自の施策に使えるお金は住民1人あたり都が28万1千円で、ほかの道府県平均の約3.6倍です。都は子育て世帯への給付や水道料金の無償化などを次々に打ち出していますが、交付税を受け取る自治体は増えた税収の一部しか使えず、同じことはできません(朝日新聞、北海道新聞)。
税収の格差は、是正の取り組みを始める前の水準にまで広がっており、放置できません。ただし是正を強めすぎれば、自治体が税収を増やそうとする意欲をそぎかねないため、地方税制全体を一体で見直すべきです(朝日新聞)。日本経済新聞も、当面の措置としてやむを得ないとして、都に独善的な姿勢の見直しを求めています。
反対派の意見
東京を狙い撃ちし、限られたパイを奪い合うような内向きな議論の先に、日本の未来はありません。地方税制度の改悪には断固として反対し、あらゆる手段で対抗します(小池百合子・東京都知事)。10月9日の会見でも、税収が増えても交付税が減って相殺される今の仕組みこそが地方の意欲をそいでいるとして、「事実に基づいた建設的な議論」を求めました。
2008年度以降の「偏在是正措置」で、本来は都の税収となる財源が、2026年度だけで約1.6兆円、累計で約12.6兆円、ほかの道府県に配られてきました。地方税と地方交付税などを合わせた住民1人あたりの財源で見れば、都は全国平均とほぼ同じ水準で、是正すべき偏在はありません。国が根拠にする「財源超過額」は理論値で、昼間に流入する人への対応や首都の警察・消防といった需要が十分に反映されていません(東京都)。
土地の固定資産税まで検討の対象にするのは、特別区の貴重な税源をさらに吸い上げる動きで、受益と負担の関係を無視しています。23区が共同で断固反対します(特別区長会)。23区はふるさと納税などでも税収が流出しており、2025年度だけで約3600億円の影響が出ているとしています。
丁寧な議論を求める立場
是正の方向性は理解しつつ、東京の国際的な競争力にも配慮し、丁寧に議論すべきだという意見もあります(神戸新聞)。愛知県の大村秀章知事も、税は地域の受益に応じて負担するという原則を踏まえ、丁寧な議論を求めています。
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
是正を求める道府県
「東京vs地方」から「東京vs首都圏」へ
推測これまでの是正論は、地方の県が中心でした。今回は東京に隣接する埼玉・千葉・神奈川の3知事まで是正を求めており、子育て支援などで差がつくと、住民が東京に移ってしまうという危機感があるとみられます。都にとっては、身近な首都圏からも包囲される形になっています。
推測のもとにした事実
- ・埼玉・千葉・神奈川の3知事は6月29日、官房長官に税源の偏在是正を申し入れた埼玉県(3知事の申し入れ)(6/29)
- ・都は子育て支援などの独自策を次々に実施しており、他の自治体との差が指摘されている朝日新聞 社説(12/24)
東京都
論点を「交付税制度の改革」に広げる理由
推測都は「東京か地方か」の対立ではなく、税収が増えても交付税が減る今の制度こそが問題だと主張しています。議論を国と地方全体の財源配分に広げれば、都だけが標的になるのを避けられるという狙いがあるのかもしれません。小池知事は、政府の文書から「一極集中」という言葉が外れたことに「意思を感じる」とも述べています。
推測のもとにした事実
- ・小池知事は10月9日の会見で、交付税の仕組みを問題視すべきだと述べ、高市首相に「期待している」と答えた東京都(知事の定例会見)(10/9)
- ・都は「地方交付税制度を含む地方税財政制度全体の抜本的な改革」を国に働きかけるとしている東京都公式note(都と地方の税収)(9/7)
世の中の声
SNSの反応
是正推進寄りの声
東京は給食費や修学旅行代まで無料にしているけれど、首都圏のほかの自治体ですらそんな余裕はない。ここまで差がつくのはおかしいと思う
本社が東京に集まっているから、東京の税収が多いのは当たり前。地方の店や工場の売り上げも本社で計算されるのだから、是正の仕組みは必要だと思う
反対寄りの声
ふるさと納税で東京都は2000億円以上の流出超過になっているという試算もある。そのうえさらに税収を移すのは、やり方としておかしいと思う
集め方:X(旧Twitter)で「偏在是正 OR 税収格差」×「東京」(いいね50件以上・話題順)と、「都税」×「地方 OR 偏在」×「奪う OR 再配分」(いいね20件以上)で検索し、2026年8月1日〜10月12日の日本語投稿を確認しました。この話題を直接扱った投稿は多くなく、ふるさと納税と結びつけた意見が目立ちました。世論調査は、確認できた範囲では見当たりませんでした
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- 地方全体の財源を充実させる必要があること(都も「地方財源そのものの充実が重要」としています)
- 住む地域によって、行政サービスに差が出ていること
意見が分かれている点
- 東京都の税収を、さらにほかの道府県に配り直すべきか
- 「偏在」は本当にあるのか(国の推計は理論値か実態か)
- 東京の税収に手をつける前に、地方交付税の制度を見直すべきではないか
- 土地の固定資産税まで対象に広げることの是非
今後の注目点
- 年末にまとまる2027年度の与党税制改正大綱で、法人事業税の配り直しがどこまで拡大されるか
- 固定資産税の扱い(2027年度以降に結論)
- 東京都がどのような対抗措置をとるか
地方全体の財源を充実させるべきだという点では、是正推進派も東京都も一致しています。分かれているのは、その財源を「東京から回す」のか、「国と地方の制度全体を見直して生み出す」のか、という点です。 推進派は、税収の格差がそのまま子育て支援などの差になっていることを問題にします。東京都は、交付税で調整した後の財源は全国並みで、東京の狙い撃ちは成長を妨げると反論しています。年末の税制改正大綱が、最初の結論になります。
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