MMX、火星の衛星の砂を持ち帰りへ 大型探査への期待と、宇宙科学の課題
JAXAは10月20日、火星の衛星フォボスから砂を持ち帰る探査機「MMX」をH3ロケットで打ち上げる予定です。「はやぶさ2」に続く大型の探査で、成功すれば世界初となります。日本の宇宙科学の強みを生かす挑戦として期待する立場と、費用や打ち上げのリスク、宇宙科学全体の先細りを心配する立場の見方をまとめました。

この記事のポイント
- JAXAは、火星の衛星フォボスの砂を持ち帰る探査機「MMX」を、10月20日午前4時41分に種子島宇宙センターからH3ロケット10号機で打ち上げる予定です。
- 探査機は約1年で火星の周りを回る軌道に入ります。フランスとドイツの探査車を先にフォボスに降ろしたあと、探査機自身も着陸して10グラム以上の砂を採取し、2031年度に地球に戻る計画です。
- 火星の衛星から試料を持ち帰れば、世界で初めてです。フォボスの成り立ちや、火星の水の起源を探る手がかりになると期待されています。
- H3ロケットは2025年12月の8号機で衛星を軌道に投入できず、失敗しています。その後、2026年6月の6号機で打ち上げを再開しました。
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① 何が起きているのか
MMXの計画
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 打ち上げ | 2026年10月20日 4時41分(予備期間は11月7日まで) |
| ロケット | H3ロケット10号機(種子島宇宙センター) |
| 目的地 | 火星の衛星フォボス(直径20〜30キロほど) |
| 採取の目標 | 10グラム以上の砂 |
| 地球への帰還 | 2031年度(カプセルをオーストラリアで回収) |
| 国際協力 | フランス・ドイツの探査車、米国・欧州との協力 |
「はやぶさ」から続く試料の持ち帰り
- はやぶさ:小惑星イトカワから試料を持ち帰る
- はやぶさ2:小惑星リュウグウから試料を持ち帰る
- MMX:火星の衛星フォボスから砂を持ち帰る計画(成功すれば世界初)
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
期待派の意見
「探査機の準備は万全。打ち上げが待ち遠しい」(川勝康弘・MMXプロジェクトマネージャ)。2020年の計画発表時には「サンプルリターン(試料の持ち帰り)では世界の先頭を走る」と語っていました。
宇宙科学研究所の藤本正樹所長は、中型の計画で世界を「あっ!」と言わせる成果を出すことが研究所の最大の強みだとし、MMXを「はやぶさ2」に続いて小さな天体から試料を持ち帰る計画と位置づけています。欧州などとの国際協力の場にもなるとしています。
フォボスは、火星に捕まった小惑星なのか、巨大な衝突で飛び散ったかけらが集まったものなのか、2つの説があります。持ち帰った砂の分析で、この論争に決着がつくと期待されています。
課題指摘派の意見
藤本所長は同じメッセージで、日本の宇宙科学は「このまま何もしないと将来のミッションが無くなってしまう」状態だと訴えています。小型ロケット「イプシロン」の問題や、利益の少ない宇宙科学の仕事をメーカーが引き受けにくくなっていることなどを理由に挙げています。
内閣府の宇宙科学・探査小委員会では、委員から、海外との共同研究は円安や物価の上昇で予算が目減りし、研究計画にも影響しかねないとの意見が出ています。
計画発表時の総開発費は464億円で、「はやぶさ2」より6割多い見込みでした。打ち上げは当初の2024年からH3の開発の遅れで延び、そのH3は2025年12月にも失敗しています。大型の探査は、1回の失敗で失うものも大きくなります。
政府
松本洋平・文部科学相は、H3の打ち上げで実績を示して信頼性を高めたいとし、MMXは予定どおり打ち上げを進める考えを示しています。
Xの発信
JAXA(宇宙航空研究開発機構):MMXを載せたH3ロケット10号機の打ち上げが、全国の広い範囲で観測できる可能性があると呼びかけた
JAXA(宇宙航空研究開発機構)のXの投稿を見る ↗
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
JAXA
なぜ今の時期の打ち上げにこだわるのか
推測火星と地球の位置関係から、打ち上げに適した時期は限られています。今回の10〜11月を逃すと、次の機会まで2年ほど待つことになり、費用も計画全体の日程もさらに膨らみます。H3の失敗からの立て直しの途中でも、予定どおりの打ち上げを目指しているとみられます。
推測のもとにした事実
- ・火星と地球の位置関係から、今年10〜11月の打ち上げが望ましいとされる共同通信(熊本日日新聞・機体公開)(8/13)
- ・文科相は、MMXはスケジュールに沿って打ち上げを進める考えを示した共同通信(熊本日日新聞・文科相の会見)(6/16)
③ ポイント整理
意見が一致している点
- 火星の衛星からの試料の持ち帰りに成功すれば、世界初の成果になること
- H3ロケットの信頼性を取り戻すことが、日本の宇宙開発全体にとって大切なこと
意見が分かれている点
- 大型の探査に費用をかけることを、どこまで優先すべきか
- 宇宙科学全体の予算や人材を、どう確保していくか
今後の注目点
- 10月20日の打ち上げが予定どおり成功するかどうか
- 火星周回軌道への到着と、フォボスへの着陸
- 宇宙科学の予算や、次のミッションの計画
MMXが成功すれば世界初の成果になり、日本の強みである試料の持ち帰りを示す機会になるという点では、見方は一致しています。分かれているのは、その先の見通しです。 期待派は、「はやぶさ2」に続く挑戦が科学の発展や国際協力につながると考えます。課題指摘派は、MMXの意義は認めつつ、費用や打ち上げのリスク、宇宙科学全体の先細りに目を向ける必要があると考えています。
④ その後どうなった?
この記事の公開後に出た結果や、大きな動きを追記しています。
MMXの打ち上げに成功、火星の衛星へ5年の旅
JAXAは20日午前4時41分、火星衛星探査機「MMX」を種子島宇宙センターからH3ロケット10号機で打ち上げ、予定の軌道で分離して打ち上げに成功しました。H3の成功は3回連続で、10機中8機の成功になりました。 MMXは2027年8月にも火星の周回軌道に着き、29年ごろに衛星フォボスに2回着地して砂などを採取します。31年7月に試料入りのカプセルをオーストラリアの砂漠に届ける計画で、実現すれば火星圏からの試料の持ち帰りとして世界初になります。
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