「核のごみ」調査と使用済み燃料の保管 交付金と引き換えの受け入れは妥当か 茨城・常陸大宮と山口・上関
茨城県常陸大宮市が、原発から出る「核のごみ」の最終処分地選びの第1段階となる文献調査の受け入れを表明しました。山口県上関町では、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の計画を進める町長が再選されました。受け入れを評価する立場と、進め方や地元の負担を問題視する立場の主張をまとめました。

この記事のポイント
- 茨城県常陸大宮市の鈴木定幸市長は9月30日、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選びの第1段階となる文献調査の受け入れを表明しました。全国で5例目、本州では初めてです。文献調査を受け入れると、最大20億円の交付金が支払われます。
- 国の申し入れから約1カ月での判断で、表明までに住民説明会は開かれませんでした。茨城県の大井川和彦知事は、次の段階の「概要調査」には進ませない考えを示しています。
- 山口県上関町では10月4日の町長選で、中国電力の使用済み核燃料の中間貯蔵施設の計画を進める現職の西哲夫氏が再選されました。中国電力はまだ事業計画を示していません。
- 国策への貢献や地域の存続を理由に受け入れを評価する声がある一方、住民への説明の不足や、交付金で自治体を誘導する進め方への批判も出ています。
みんなは?
読者アンケート・回答 件※ 統計的な世論調査ではありません。
① 何が起きているのか
最終処分地選びの流れ
| 段階 | 内容 | 期間の目安 | 交付金 |
|---|---|---|---|
| 文献調査 | 資料をもとに、活断層などの状況を調べる | 約2年 | 最大20億円 |
| 概要調査 | 実際に地面を掘って調べる(知事の意見が必要) | 約4年 | 最大70億円 |
| 精密調査 | 地下に施設をつくって調べる | 約14年 | ― |
文献調査を受け入れた自治体
| 自治体 | 経緯 |
|---|---|
| 北海道寿都町・神恵内村 | 最初の2例。北海道知事は概要調査に反対 |
| 佐賀県玄海町 | 2024年に受け入れ。2026年7月の町長選で受け入れた現職が落選 |
| 東京都小笠原村(南鳥島) | 国が申し入れ、2026年4月に村長が容認 |
| 茨城県常陸大宮市 | 国が申し入れ、9月30日に受け入れを表明(本州で初めて) |
常陸大宮市の経緯
- 8月31日:経済産業省が文献調査を申し入れ
- 9月9日:非公開の会合で市議の意見を聞き、賛否が分かれる
- 9月18日:市長が判断を保留(風評被害の懸念など)
- 9月30日:受け入れを表明(住民説明会は開かれず)
- 10月2日:茨城県知事が、概要調査には進ませない考えを示す
上関町の中間貯蔵施設
- 中国電力が、関西電力との共同開発を前提に、使用済み核燃料を一時的に保管する施設の計画を進めています
- 10月4日の町長選では、推進する現職の西哲夫氏が1023票、新人の原康司氏が428票でした
- 中国電力は、貯蔵量や稼働時期を含む事業計画をまだ示していません
② それぞれの意見
各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。
受け入れ評価派の意見
核のごみの処分は喫緊の国家的課題で、国策に貢献することに大きな意義があります。文献調査は、処分場づくりの「スタートラインの手前の調査」です(鈴木定幸・常陸大宮市長)。人口減少が進むなか、市長は、一大国家プロジェクトが市の存立の基盤として機能する可能性も挙げています。経済産業相との面会の後、風評被害などへの懸念は「ほぼ解消された」としています。
本州で初めて、しかも首都を抱え大量の電力を使う関東の自治体が加わった意味は大きく、表明を歓迎します。文献調査は、地域が処分地として検討に値するかを科学的に確かめる入り口にすぎません。国は第6、第7の調査地域の獲得を急ぎ、複数の地域を並行して比べられるようにすべきです(産経新聞)。
上関町長選では、計画が浮上してから初めての選挙で、中間貯蔵施設の計画を進める現職が大差で再選されました。西哲夫町長は「施設の必要性について民意が表れた。しっかりと前へ進めていく」と述べ、町で燃料を預かるなら相応の地域振興策を出すのは当然だとして、中国電力に早く事業計画を出すよう求めるとしています。
慎重・反対派の意見
国の申し入れからわずか1カ月で、住民説明会も開かずに受け入れを決めたのは、住民を軽視した拙速な姿勢です。交付金が自治体を国策に誘導する手段になっています(北海道新聞)。市議会の非公開の会合でも賛否は割れ、判断は市長に委ねられました。共産党の小室貞夫市議は、住民を無視した調査の押しつけだと抗議しています。
なぜ常陸大宮市が選ばれたのかが判然としません。国は科学的特性マップで「好ましい特性」の地域だとしますが、それなら国土の6割以上が当てはまります。国が調査地点を増やそうと躍起になる背景には、処分地の当てもなく「原発の最大限活用」へ転換したことへの批判をかわす狙いがあるとみるべきです。地殻変動の活発な日本に「地層処分の適地はない」とする専門家の声明もあります(朝日新聞)。
茨城県には東海第二原発など原子力施設が多く、受益と負担のバランスがとれていないとして、大井川和彦知事は次の段階の概要調査には進ませない考えです。上関町の計画でも、周辺の田布施町議会が反対決議を可決し、柳井市議会も反対決議を求める請願を採択しました。町長選に出た新人の原康司氏は、施設の問題は「新たな分断の種を持ち込んだ」と述べていました。
背景を読む:それぞれの思惑
ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。
国(経済産業省)
「手挙げ」から「国からの申し入れ」へ
推測これまで文献調査は、自治体が自ら応募する形が中心でした。常陸大宮市は、南鳥島(東京都小笠原村)に続き、国が自ら申し入れた2例目です。調査地点を増やすため、国がより前面に出るようになったとみられます。ただ、北海道や佐賀県の知事も概要調査に反対しており、文献調査の先に進めるかどうかは見通せません。
推測のもとにした事実
- ・経産省が主体的に調査を申し入れたのは、南鳥島に続き2例目朝日新聞 社説(10/2)
- ・国は約10カ所で調査し、最終的に1カ所に絞り込みたい考え秋田魁新報(共同・国の申し入れ)(8/31)
世の中の声
SNSの反応
受け入れ評価寄りの声
文献調査の受け入れを決めた市長の決断には、敬意を表したいと思う
慎重・反対寄りの声
住民説明会も開かずに受け入れを決めるのは、密室で決めたのと同じだと思う。まず市民の理解を得るのが先だと思う
原発の再稼働で核のごみを増やし続けながら、処分場だけを地方に押しつけるのは理不尽だと思う
その他の声
電気をたくさん使っているのは都市のほう。核のごみの問題は、都市に住む人も自分ごととして考えるべきだと思う
集め方:X(旧Twitter)で「常陸大宮」×「核のごみ OR 文献調査 OR 最終処分」(いいね30件以上・話題順)と、「常陸大宮 OR 核のごみ」×「英断 OR 敬意 OR 応援」(いいね20件以上)で検索し、2026年9月20日〜10月12日の日本語投稿を確認しました。説明会を開かずに決めた進め方を批判する投稿が目立ちました。常陸大宮市や上関町についての最新の世論調査は、確認できた範囲では見当たりませんでした
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。
③ ポイント整理
意見が一致している点
- 核のごみの処分場が決まっていないことは、国全体で向き合うべき課題であること
- 受け入れには、住民や周辺自治体への丁寧な説明が欠かせないこと(受け入れを歓迎する産経新聞も、周辺自治体への説明を求めています)
意見が分かれている点
- 交付金と引き換えに受け入れを促す進め方は妥当か
- 住民説明会の前に首長が受け入れを決めてよいか
- 地震の多い日本に、地層処分の適地はあるのか
今後の注目点
- 常陸大宮市での文献調査の開始と、住民への説明の場(対話の場)
- 茨城県知事の反対のもとで、次の段階に進めるか
- 中国電力が上関町の中間貯蔵施設の事業計画をいつ示すか
原発から出る核のごみの行き先を決めなければならないという点では、受け入れを評価する側も慎重な側も一致しています。分かれているのは、その決め方です。 評価派は、国策への貢献と地域の存続を理由に、調査を引き受けた首長の判断を歓迎します。慎重派は、住民への説明を後回しにし、交付金で自治体を誘導する進め方を問題にしています。どちらの地域でも、地元の理解をどう得ていくかが今後の焦点です。
④ その後どうなった?
この記事の公開後に出た結果や、大きな動きを追記しています。
常陸大宮市で文献調査が始まる、全国5例目
原子力発電環境整備機構(NUMO)は15日、茨城県常陸大宮市で「核のごみ」の処分地選定に向けた文献調査を始めました。全国で5例目です。2年ほどかけて、地質や火山の影響などを資料で調べます。国は市に最大20億円を交付します。 次の段階の概要調査に進むには知事の同意が必要ですが、茨城県の大井川和彦知事は「同意するつもりはない」との姿勢を示しています。
あなたの考えに近いのは?
ワンタップで回答できます。回答すると、ほかの読者の回答の割合が見られます。
※ 記事を読んだ方が自由に答える読者アンケートで、統計的な世論調査ではありません。当サイトとしての賛否を示すものでもありません。
この記事をシェアする
いろいろな立場の人と一緒に考えるきっかけに。