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「脱ホルムズ」の原油調達に交付金 エネルギーの備えか、値上がりのツケか

政府は、ホルムズ海峡を通らずに原油を輸入する事業者に、増えたコストを交付金で補う「原油等調達多角化法案」など3法案を閣議決定しました。原資は石油業界から集める納付金です。有事への備えとして必要だとする立場と、価格への上乗せや化石燃料依存の温存を懸念する立場の主張をまとめました。

海に浮かぶ石油タンカー
イメージ写真:Mohan R / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

この記事のポイント

  • 政府は10月13日、「原油等調達多角化法案」など原油の調達に関する3つの法案を閣議決定しました。臨時国会での成立を目指しています。
  • 2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、ホルムズ海峡の通航が大きく制約されています。日本はこれまで、原油の9割以上をこの海峡経由で輸入してきました。
  • 多角化法案は、ホルムズ海峡を通らずに原油を輸入する事業者に、増えたコストを交付金で補う仕組みです。原資は税金ではなく、石油元売りや商社など輸入事業者から集める納付金です。米国産は中東産の2倍以上の日数がかかり、輸送費が膨らみます。
  • 納付金の単価や交付額はこれから決まります。納付金が製品価格に上乗せされれば、最終的にはガソリン代などを通じて国民の負担になる可能性もあります。

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① 何が起きているのか

3つの法案

法案 主な内容
原油等調達多角化法案 ホルムズ海峡を通らずに原油を輸入する事業者に、増えたコストを交付金で補う。原資は全輸入事業者からの納付金
原油等輸送保険法案 情勢悪化で「再保険」が引き受けられず船が動けなくなるのを防ぐため、政府が損害保険会社の保険金支払いの一部を補う
JOGMEC法改正案 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、ホルムズ海峡を迂回する中東のパイプラインに投資できるようにする

輸送にかかる日数

産地 日本までの日数(目安)
中東産 約20日
米国産(喜望峰経由) 約50日

これまでの経過

  • 2月末:米国・イスラエルがイランを攻撃。ホルムズ海峡の通航が大きく制約される
  • 3月以降:国家備蓄の放出、民間備蓄義務の引き下げ、ガソリン補助金の再開
  • 8月:経済産業省が、納付金で代替調達を支える制度案を示す
  • 10月13日:3法案を閣議決定

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

推進派の意見

  1. ホルムズ海峡など特定の経路を通る原油に頼りすぎるリスクが、改めて認識されました。調達先と輸送ルートを平時から分散しておくため、法案を速やかに具体化します(赤沢亮正・経済産業相)。

  2. 石油が途絶えるリスクが現実になった以上、調達先の多角化は避けられません。有事への備えは平時のコストであり、国民全体で広く負担しなければなりません(日本経済新聞の社説)。

  3. 原資は税金ではなく、ホルムズ経由で輸入する事業者も含めた全輸入事業者からの納付金です。業界全体で備えの費用を分け合う仕組みで、交付金を受けるには、調達計画について経済産業相の認定が必要です。あわせて、船の保険を政府が補う制度や、海峡を迂回するパイプラインへの投資も可能にします。

慎重派の意見

  1. 交付金の原資は全輸入事業者から集める納付金のため、導入されれば最終的に製品価格への反映などで国民の負担増につながります(産経新聞)。元売りや商社が追加分を販売価格に上乗せすれば、ガソリン価格の上昇などで家計に影響する可能性があります(共同通信)。納付金の単価や交付額はまだ示されておらず、負担の大きさがわからないまま審議が進むことになります。

  2. 日本は2022〜2025年度だけで13.6兆円のエネルギー補助金を投じてきましたが、補助金は対症療法にすぎません。価格の動きを打ち消して省エネや代替エネルギーへの転換を鈍らせ、化石燃料に頼る社会の弱さを温存します。危機の根本にある化石燃料の輸入依存そのものを減らすべきです(自然エネルギー財団)。

  3. 日本は原油の中東依存度が約94%と、ホルムズ危機に最も弱い国です。備蓄の放出やガソリン補助金は脱化石燃料を遅らせる「現状維持」の策で、輸送ルートや海外情勢に左右されにくい再生可能エネルギーの地産地消こそが安全保障になります(グリーンピース・ジャパン)。

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

政府・経済産業省

なぜ「税金」ではなく「納付金」なのか

推測財源を業界からの納付金にすれば、国の予算を使わずに済み、財政への新たな負担を避けられます。ただ、その費用は製品価格を通じて利用者に回る可能性が高く、実質的には「見えにくい形の国民負担」になるとの見方もできます。どこまで価格に反映されるかは、納付金の単価が決まるまでわかりません。

推測のもとにした事実

世の中の声

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • ホルムズ海峡に原油の9割以上を頼ってきた状態には、大きなリスクがあること
  • エネルギーの備えにはコストがかかること(推進派の日経社説も「国民全体で広く負担」としています)

意見が分かれている点

  • 輸送ルートの分散に、お金をかけて取り組むべきか
  • その費用を、価格を通じて国民が負担することをどう考えるか
  • 化石燃料の調達を支えるより、再生可能エネルギーへの転換を急ぐべきではないか

今後の注目点

  • 臨時国会での審議と、法案が成立するかどうか
  • 納付金の単価と、ガソリンなどの価格への影響
  • ホルムズ海峡の通航がいつ正常に戻るか

ホルムズ海峡への依存がリスクであることは、どの立場も認めています。分かれているのは、その備えの「やり方」と「誰が払うか」です。 推進派は、平時から調達ルートを分けておくことが欠かせず、その費用は広く負担すべきだと主張します。慎重派は、負担の大きさが見えないまま価格に上乗せされることや、化石燃料への依存を温存することを懸念し、再生可能エネルギーへの転換こそが本当の備えだと訴えています。

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