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経済・財政

長期金利が30年ぶりの3%台に 「責任ある積極財政」は市場の警鐘にどう応える?

長期金利(10年物国債の利回り)が9月に約30年ぶりの3%台に乗り、住宅ローンや国の利払い費にも影響が出始めています。高市政権の「責任ある積極財政」は金利上昇の原因なのか。積極財政派と財政規律派、それぞれの言い分を整理しました。

この記事のポイント

  • 長期金利(新発10年物国債の利回り)は9月1日に約30年ぶりに3%台に乗り、9月25日には一時3.115%まで上がりました。高市政権が発足した2025年10月には1.6%台でした。
  • 金利上昇の影響で、国の借金の利払い費は膨らみます。2027年度予算の概算要求では、利払いや返済にあてる国債費が36兆6386億円と過去最大になりました。住宅ローンの固定金利も上がっています。
  • 政府は「強い経済と財政の持続可能性の両立」を掲げ、市場が想定外の動きをすれば「機動的に対応する」としています。一方、主要な全国紙はそろって、金利上昇を財政運営への「警鐘」と受け止めるよう求めています。
  • 金利上昇には、世界的なインフレや日銀の利上げなど、財政以外の要因もあります。どの要因がどれだけ効いているのかは、見方が分かれています。

① 何が起きているのか

長期金利が、約30年ぶりの高さまで上がっています。長期金利は、国が10年間お金を借りるときの金利(新発10年物国債の利回り)のことで、住宅ローンの固定金利や企業の借り入れの金利の目安にもなります。

何が起きているのか

時期 長期金利の動き
2025年10月(高市政権発足) 1.6%台
2026年7月 「骨太の方針」原案が財政規律を緩めると受け止められ、2.8%台後半へ
9月1日 約30年ぶりに3%台に
9月18日 日銀が政策金利を1.25%程度に引き上げ
9月25日 一時3.115%(約30年1カ月ぶりの高さ)
10月6日 新たに発行する10年国債の表面利率が3.1%に

暮らしと国の財布への影響

  • 住宅ローン:長期固定型の「フラット35」の10月の金利は最低3.83%で、今の制度になった2017年以降で最も高くなりました
  • 国の利払い費:2027年度の概算要求では、国債の利払いや返済にあてる国債費が36兆6386億円と過去最大。利払い費だけで16兆5888億円と、前年度より27%増えています
  • 円安:1ドル=158円前後と、円安も続いています

なぜ金利が上がっているのか

主に次のような要因が重なっていると指摘されています。

  • 高市政権の積極財政や消費税減税による財政悪化への不安
  • 物価高を受けた日銀の利上げとその先の利上げ観測
  • 米国の長期金利の上昇など、世界的な金利上昇
  • 中東情勢による原油高とインフレ圧力

どの要因がどれくらい効いているのかについては、見方が分かれています。この点が、積極財政派と財政規律派の大きな争点の一つです。

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

積極財政派の意見

  1. 「責任ある積極財政」は、政府がただ歳出を増やすことではなく、国内投資を引き出して経済を大きくし、「強い経済と財政の持続可能性をともに実現する」ものです。債務残高の対GDP比を安定して下げることを中心の目標にし、国債の発行額は経済・金利・市場の状況を見ながら適切にコントロールします。消費税減税の財源も赤字国債に頼らずに確保するので「御心配には及ばない」としています(高市首相の所信表明演説)。

  2. 自民党の小林鷹之政調会長は、「責任ある積極財政」の方針は変わらず、成長による税収増で財政の持続性を高めると強調しています。片山財務相も、2027年度の概算要求の増加は前年度の補正予算を含めて比べれば約2.5兆円にとどまり、「大幅な増加とのご指摘は当たらない」と説明しています。

  3. 名目の経済成長率が金利を上回っていれば、借金が増えても経済の規模に対する借金の割合は下がっていきます。2026年4〜6月期の名目成長率は年率5.5%で、長期金利(約3%)を上回っています。政府・与党には、金利上昇は市場の「過剰反応」で、3%は慌てる水準ではないという見方もあります。

財政規律派の意見

  1. 長期金利には景気がよくて上がる「良い上昇」と、通貨の価値の下落や財政悪化への不安で上がる「悪い上昇」があり、今回は悪い面が強いと言えます。放漫財政に陥らないよう、来年度予算では事業の必要性を徹底的に見直し、新たな国債の発行を抑えるべきです(読売新聞)。

  2. 長期金利の上昇は政府の財政運営への警鐘でもあります。概算要求は過去最大で、消費税減税などの財源もはっきりしません。財政の持続可能性に対する疑いが市場にくすぶり続けており、市場の信認を得られる政策運営が厳しく問われます(産経新聞)。日本経済新聞も、政府と日銀は「長期金利3%の警鐘」を生かし、財政規律と金融政策の正常化を両立させるべきだとしています。

  3. 投資の拡大や食料品の消費税減税などを進める積極財政路線が、金利上昇に拍車をかけた面は否めません。規律を欠いた経済財政運営は限界で、市場の警鐘を真剣に受け止めて政策を修正すべきです(朝日新聞)。野村総合研究所の木内登英氏は、所信表明演説は言葉の上で配慮を示しただけで、政策の中身は変わっておらず、「御心配には及ばない」という説明では市場は納得しないと指摘しています。

「世界的な要因」を重く見る立場

  1. 長期金利の上昇は世界的な傾向でもあります。コロナ禍の巨額の財政出動で各国の政府の借金が積み上がり、中東危機による原油高でインフレ圧力が強まりました。読売新聞は、G20やG7での政策協調も検討すべきだとしています。朝日新聞も、世界的なインフレ圧力にはトランプ関税や米国のイラン攻撃が影響しており、日米の政権がともに自らの政策の問題点に向き合う必要があるとしています。

英国の「トラス・ショック」と比べる議論

  1. 2022年に英国で減税策をきっかけに国債・通貨・株が同時に売られた「トラス・ショック」が日本でも起きるかについては、見方が分かれています。三井住友DSアセットマネジメントの白木久史氏は、英国のような年金運用の仕組みがほぼないことや、経常黒字・対外資産の大きさから、同じことは起きにくいとしています。一方、マネックス証券の吉田恒氏は、株高と高い支持率が積極財政を支えており、株安を伴う「トリプル安」になれば「高市ショック」が現実味を帯びると警戒しています。

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

高市政権

「積極財政」の看板は下ろさず、言葉だけ規律寄りに?

推測所信表明演説では、債務残高の対GDP比の引き下げや「国債発行額のコントロール」など、財政規律に配慮する言葉が目立ちました。ただ、政策の中身は大きく変わっていないという指摘もあります。2月の衆院選で積極財政を訴えて大勝した以上、看板を下ろせば支持層の離反を招きかねません。一方で、何もしなければ市場の不安は収まらない。看板は守りつつ、言葉で市場をなだめる「両にらみ」の作戦に見えます。

推測のもとにした事実

財務省

想定金利3.8%に込めた「歯止め」

推測財務省は2027年度の予算要求で、利払い費を計算するときの想定金利を3.8%と、実際の金利(直近3カ月平均2.7%)より大きく上乗せしました。利払い費が膨らんで見えれば、それだけ他の歳出を増やす余地は小さく見えます。これまで余った利払い費は補正予算の財源に回されることがありましたが、その「隠れた財布」も細りつつあります。高めの想定金利は、金利上昇のリスクに備えると同時に、積極財政に「数字で歯止めをかける」道具にもなっている――そう読むこともできます。

推測のもとにした事実

高市政権

本音は「利上げはもう少し待ってほしい」?

推測積極財政で景気と株価を支えたい政権にとって、日銀の利上げは借入コストを上げ、国の利払い費も増やす「ブレーキ」です。首相が日銀総裁との会談で国債の買い入れを求めたとの報道や、「骨太の方針」原案の日銀に関する文言が利上げをけん制していると市場で受け止められたことは、政権が日銀に配慮を求めたい本音の表れと見ることもできます。ただし、政府は日銀の独立性を尊重すると繰り返し説明しています。

推測のもとにした事実

米国(トランプ政権)

ベッセント財務長官が日本に「注文」をつける理由

推測米国のベッセント財務長官は、日銀の利上げに期待を示し、アベノミクス型の政策からの脱却まで求めたと報じられています。表向きは過度な円安の是正ですが、米国自身も金利上昇に苦しむなか、日本の金利上昇や円安が米国の金利や貿易に波及するのを防ぎたい、という自国の事情がにじみます。日本の政権にとっては耳の痛い「外圧」ですが、日銀にとっては利上げを進めやすくなる追い風にもなりうる――立場によって受け止め方が分かれる圧力です。

推測のもとにした事実

  • ・ベッセント氏は植田総裁との会談で、円安の是正につながる日銀の利上げに期待感を示した。米国は日本の長期金利の上昇が米国の金利に波及することを懸念している読売新聞 社説(9/3)
  • ・ベッセント氏は財政拡張と金融緩和型のアベノミクスからの脱却も訴えた。産経新聞は、米国がここまで露骨に日本に注文をつけるのは異例だとしている産経新聞 主張(9/4)

財政規律を訴える側

「金利上昇=積極財政のせい」と言い切れるのか

推測金利上昇は、財政健全化や増税・歳出削減を訴えてきた側にとって、主張を通す追い風になります。ただ、金利上昇には世界的なインフレや日銀の利上げなど財政以外の要因も重なっており、規律派の側も「どこまでが財政のせいか」は数字で示せていません。どちらの陣営も、金利の動きを自分の主張に有利なように語りがちな点には注意が必要です。

推測のもとにした事実

  • ・読売新聞の社説も、長期金利の上昇は世界的傾向であり、各国の政府債務の積み上がりや原油高によるインフレ圧力が背景にあると指摘している読売新聞 社説(9/3)
  • ・朝日新聞の社説も、世界的なインフレ圧力はトランプ関税や米国のイラン攻撃に起因するとし、金利上昇を「他国のせいばかりにするのは無理がある」としつつ、日米双方の責任に触れている朝日新聞 社説(9/2)

世の中の声

世論調査

  • 政府が決めた食料品の消費税減税について、財政への不安を「感じる」「ある程度感じる」が合わせて71.7%でした。一方、減税そのものには「賛成」52.7%、「反対」43.1%でした(共同通信、2026年8月22〜23日)。長期金利の上昇そのものについて尋ねた全国調査は、確認できた範囲では見当たりませんでした。

    熊本日日新聞(共同通信世論調査)(8/23)

SNSの反応

積極財政寄りの声

  • 世界中で金利が上がっているなかで、日本の上がり方は欧米よりむしろ小さい。積極財政のせいだと決めつけるのは言い過ぎだと思う

  • 成長しなければ賃上げも税収も社会保障の充実もない。まず稼ぐ力を上げるのが先だと思う

  • 物価の基調がそれほど強くないのに利上げを急ぐのはおかしい。景気の足を引っ張っているのは日銀の方だと思う

財政規律寄りの声

  • 政権が望んだのは成長のための財政拡大でも、市場が突きつけたのは「そのツケは誰が払うのか」という問いだと思う

  • 財源は「心配に及ばない」と言われても、中身が見えないままでは安心できない

  • このまま金利が上がり続ければ、いずれ大幅な歳出カットを迫られる日が来るのではと心配

その他の声

  • 地方銀行は国債の含み損をかなり抱えているはず。金利上昇で地方の金融機関が大丈夫なのか気になる

  • 金利の上昇は世界的な流れで、日本だけの問題ではない。ただ、その流れの中で日本の弱いところを突かれるのが怖い

集め方:X(旧Twitter)で「長期金利 OR 国債金利 OR 積極財政 OR 財政規律」(いいね50件以上・話題順)と、「金利上昇 OR 住宅ローン OR 国債 OR 円安」×「高市 OR 財政」(いいね100件以上)で検索し、2026年9月10日〜10月10日の日本語投稿 約25件を確認しました(政党・報道機関の投稿や、ニュースを紹介するだけの投稿が多く、個人の意見は限られていました)
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 金利上昇は住宅ローンや企業の借り入れ、国の利払い費に重くのしかかること
  • 財政の持続可能性を保ち、市場の信認を失わないことが大事だという点(政府も「持続可能性は当然の前提」としています)
  • 金利上昇には世界的なインフレや日銀の利上げなど、財政以外の要因もあること

意見が分かれている点

  • 今回の金利上昇が「悪い上昇」なのか、どこまでが積極財政のせいなのか
  • 成長による税収増で財政を立て直せるのか、まず歳出や国債の発行を抑えるべきか
  • 日銀の利上げのペースは適切か、早すぎるのか

今後の注目点

  • 10月29〜30日の日銀金融政策決定会合(追加利上げの有無)
  • 年末の2027年度予算案と、新規国債の発行額
  • 食料品の消費税減税の財源の中身
  • 安保3文書の改定にともなう防衛費の水準

政府も批判する側も、「財政の持続可能性が大事だ」という点では一致しています。分かれているのは、そのための道筋です。政府は「成長して税収を増やし、借金の割合を下げる」と言い、批判する側は「まず歳出と国債発行を抑えて、市場の信認を取り戻すべきだ」と言います。 答え合わせの場になるのは、年末の予算編成です。国債の発行額や消費税減税の財源がどう示されるかで、「責任ある積極財政」の「責任」の部分が問われることになります。