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憲法・司法

憲法改正の発議はいつ? 9条と緊急事態条項をめぐる攻防

高市首相は来年2月の党大会までに改憲発議のめどを立てたい考えです。焦点の緊急事態条項と9条について、改憲派と慎重・反対派はどこで意見が分かれているのか、参院の議席の数とあわせて整理しました。

この記事のポイント

  • 改憲の主な焦点は「緊急事態条項(大災害などで選挙ができないときの議員任期の延長など)」と「9条への自衛隊の明記」です。
  • 高市首相は「来年の党大会までに発議のめどを」と表明しており、その党大会は2027年2月21日に前倒しされました。
  • 衆院では自民党だけで3分の2を超えていますが、参院では改憲に前向きな会派を合わせても3分の2に届かず、公明党などの動きが鍵を握ります。
  • 改憲派には保守系の産経・読売新聞が、慎重・反対派にはリベラル系の朝日・毎日・東京新聞が並び、保守とリベラルの対立がはっきり表れているテーマです。

① 何が起きているのか

10月5日に召集された臨時国会では、消費税減税や議員定数削減の陰に隠れがちですが、憲法改正をめぐる動きも続いています。

何が議論されているのか

改憲論議の主な焦点は、次の2つです。

  • 緊急事態条項:大規模な災害、感染症のまん延、内乱、武力攻撃などで選挙ができない場合に、国会の承認を得て議員の任期を延長できるようにするものです。衆院法制局などがまとめた「イメージ案」には、内閣が法律と同じ効力を持つ**「緊急政令」**を出せる規定も盛り込まれています。
  • 9条:自民党は、戦争放棄(1項)と戦力不保持(2項)を残したまま、自衛隊を明記する案です。一方、維新は2項を削除して国防軍を明記する案で、両党の間には溝があります。

このほか、参院選の「合区(2つの県で1つの選挙区)」の解消なども検討項目に挙がっています。

憲法を変えるための手続き

  1. 衆院と参院の憲法審査会で議論する
  2. 衆参それぞれの本会議で、総議員の3分の2以上が賛成すれば、国会が改正を「発議」する
  3. 発議から60日〜180日以内に国民投票を行い、有効投票の過半数が賛成すれば成立する

国民投票の手続きを定めた国民投票法は、7月に一部が改正されました。ただし、政党のCMやネット広告の規制は盛り込まれておらず、課題として残っています。

議席の数:衆院は届くが、参院は届かない

3分の2のライン 改憲に前向きな側
衆院(定数465) 310 自民315+維新36=351(自民だけで超える)
参院(定数248) 166 自民・維新・国民民主・参政・日本保守党・チームみらいの合計で164(わずかに届かない)

参院では、公明党(21議席)などの協力がなければ発議できない計算です(議席数は衆参の公式発表をもとに当サイトが計算)。さらに参政党は、感染症を含む緊急事態条項には反対しており、項目によって組める相手が変わります。

ここまでの流れ

時期 出来事
2026年2月 衆院選で自民党が単独で3分の2を超える
2026年4月 自民党大会で首相が「時は来た」。次の党大会までに発議のめどを、と表明
2026年5月 衆院憲法審査会に緊急事態条項の「イメージ案」が初めて示される
2026年7月 国民投票法の改正が成立。特別国会は、自民と維新の溝が埋まらず条文づくりに至らないまま閉会
2026年10月6日 自民・維新が条文起草のための協議を再開。自民党は次の党大会を2027年2月21日に前倒しすることを決定
2026年10月7日 自民の小林政調会長が、緊急事態条項と自衛隊の位置づけを中心に「発議に向けて議論を加速」する考えを示す

この臨時国会では、衆参の憲法審査会に条文起草委員会を設けるかどうかが焦点になっています。

② それぞれの意見

各立場の主な主張を、元の発言や記事をもとに、当サイトがわかりやすくまとめています。

改憲派の意見

  1. 憲法は時代に合わせてアップデートすべきものです。4月の党大会では「時は来た」として、発議のめどが立った状態で次の党大会を迎えたいと表明しました(首相)。10月7日の代表質問でも、党派を超えた建設的で活発な議論を強く期待すると述べています。

  2. 衆参の憲法審査会に条文起草委員会を設け、改正原案の条文づくりに入るときです。自衛隊の明記には違憲論をなくす意義がありますが、改憲の最終的なゴールは9条2項(戦力不保持)の削除と軍の規定です。巨大地震や有事への懸念が高まるなか、緊急政令を含む緊急事態条項の創設も急務です(産経新聞)。維新も、9条2項を削除して国防軍を明記する案を掲げています。

  3. 参院の緊急集会には、国会の代わりを務める機能に限界があります。国会が十分に役割を果たせるよう、緊急事態条項を設けることは理解できます。また、平和主義を唱えるだけでは国の安全は守れなくなっており、厳しい安全保障環境を直視した9条の改正論議も急務です(読売新聞)。自民党の新藤義孝氏も、緊急事態条項がないことを「憲法の未完部分」と呼び、早期の条文化を求めています。

慎重・反対派の意見

  1. 緊急事態を名目に政府へ権限を集中させると、権力の乱用や人権侵害につながるおそれがあります。議員任期の延長は、時の政権の都合で国民の投票権を奪いかねず、衆院解散中の緊急時には参院の緊急集会で対応できます。内閣が法律と同じ効力を持つ「緊急政令」を出せる規定は、国会を空洞化させ、三権分立を揺るがしかねません。戦前の「緊急勅令」が弾圧や人権侵害につながった歴史を忘れてはなりません(朝日新聞)。東京新聞も、選挙が困難かどうかの基準があいまいで、内閣が恣意的に運用するおそれがあると指摘しています。

  2. なぜ今、改憲が必要なのか、国民の理解は深まっていません。世論の関心も低いままです。参院では与党が過半数にすら届かず、実現の見通しがないなかで「発議ありき」の姿勢を続けるのは、保守派の支持固めのように映ります。期限を区切らず、まず今の法制度に足りない部分があるのかを議論すべきです(毎日新聞)。

  3. 選挙権は国民の極めて重要な憲法上の権利であり、任期延長はあくまで例外的な措置にとどめるべきです。「政権の延命や議員の保身に使われてはならない」(中道・国重徹氏)。参院の立憲民主党は、任期延長を含む改憲に反対し、参院の緊急集会で対応すべきだと主張しています。共産党も「国民が求めていない改憲の議論はするべきではない」としています。

国民民主党(緊急事態条項には前向き、9条は後回し)

  1. 有事に権力を統制するルールがない方がむしろ危ないとして、緊急時の議員任期の延長には前向きです。一方で、9条改正の優先順位は低いとし、緊急政令は外した方が合意を得やすいとしています。10月8日の代表質問では、玉木代表が「憲法改正議論が停滞している」と指摘し、9条をめぐって自民党と維新の意見が割れている点を整理するよう求めました。

参政党(改憲には前向き、緊急事態条項には反対)

  1. 憲法を通じて日本の文明を再定義する必要があるとして、改憲そのものには前向きです。ただし、緊急事態の対象に感染症が含まれる限り、緊急事態条項には反対の立場です。

公明党(加憲が基本)

  1. 今の条文に必要な規定を加える「加憲」が基本で、9条1項・2項は守る立場です。9条2項を削除して集団的自衛権を全面的に認める維新案には、平和国家としての信用を損なうと批判しています。斉藤前代表は、維新が求める方向を「少し乱暴過ぎる」と述べていました。

背景を読む:それぞれの思惑

ここからは編集部の見立て(推測)です。裏付けはありませんが、推測のもとにした事実には出典を付けています。

高市首相

「来年2月の党大会までに発議のめど」にこだわる理由

推測参院の議席を考えれば、来年2月までに発議できる見通しは立っていません。それでも期限を掲げ続けるのは、実際の発議そのものより、「改憲に本気で取り組む首相」という姿勢を示し続けること自体に意味があるからかもしれません。来春の統一地方選、2028年の参院選を前に、改憲を強く望む保守層の支持をつなぎとめたい――党大会を例年より早い2月に前倒ししたのも、選挙前に「成果」を語る舞台を用意するため、と読むこともできます。

推測のもとにした事実

自民党

なぜ本丸の9条ではなく、緊急事態条項から進めるのか

推測9条は維新とも意見が割れ、世論も賛否が拮抗しています。一方、緊急事態条項の柱である議員任期の延長は、国民民主党も賛同し、世論調査でも8割超が賛成しています。まずは通りやすいテーマで「戦後初の改憲」という実績をつくり、国民が改憲に慣れたところで本丸の9条へ進む――そんな「突破口」としての計算が働いているとみられます。

推測のもとにした事実

日本維新の会

維新が自民より踏み込んだ「9条2項削除」を掲げる理由

推測連立のなかで自民党と同じことを言っていても、存在感は埋もれるばかりです。自民案より一歩踏み込んだ「2項削除・国防軍」を掲げることで、自民の改憲案に物足りなさを感じる保守層の受け皿になりたい――そんな狙いが見えます。産経新聞が「改憲のゴールは2項削除」と社説で後押ししていることも、維新にとっては心強い材料でしょう。

推測のもとにした事実

国民民主党

玉木代表が「改憲論議の停滞」を批判する狙い

推測与党内の足並みの乱れを突くことで、「改憲を前に進めたいなら国民民主の協力が必要だ」と印象づけたいのではないでしょうか。緊急事態条項には前向きで、9条は後回しという立場は、ちょうど自民と野党の中間です。参院で25議席を持つ国民民主は、改憲の発議を左右しうる存在として、交渉の主導権を握りたいのかもしれません。

推測のもとにした事実

公明党

参院の「21議席」が握る意味

推測参院で改憲に前向きな会派を合計しても、3分の2にわずかに届きません。公明党の21議席が加わるかどうかで、発議できるかが決まる計算です。与党時代は自民の改憲案の「ブレーキ役」だった公明党ですが、連立を離れた今は、慎重な姿勢を保ちながら条件次第では協力の余地も残す――そうすることで、自民党との関係や自らの存在感を左右する「切り札」として、この21議席を使えるのかもしれません。

推測のもとにした事実

  • ・参院(定数248、欠員1)の3分の2は166。自民・維新・国民民主・参政・日本保守党・チームみらいの合計は164で、公明党は21(会派別議員数をもとにした当サイトの計算)参議院(会派別所属議員数)(10/8)
  • ・公明党は与党時代、自民の改憲案に対する「ブレーキ役」とされてきた。連立離脱後、斉藤前代表は維新の方向性を「少し乱暴過ぎる」と批判した時事通信(公明の斉藤代表)(1/4)

中道(立憲系・公明系の統一会派)

「改憲ありきでも護憲一辺倒でもない」と打ち出す理由

推測「何でも反対」と見られれば、改憲に一定の理解を示す中間層は離れていきます。そこで、衆院の解散権の制限や臨時国会の召集期限など、権力を縛る方向の独自の論点を掲げることで、「憲法を議論する用意はある」という姿勢を見せたいのでしょう。与党の改憲案には乗らず、それでいて護憲一辺倒のイメージも避ける――中間層を意識したバランスの取り方とみられます。

推測のもとにした事実

世の中の声

世論調査

  • 憲法を改正する必要が「ある」38%、「どちらともいえない」38%、「ない」20%でした(NHK、2026年5月)。

    NHK(憲法の世論調査)(5/3)
  • 9条を改正する必要が「ある」50%、「ない」48%と拮抗しました。緊急時の議員任期の延長には84%が賛成し、改憲を進める際は「幅広い合意を優先すべき」が73%でした(共同通信の郵送調査、2026年3〜4月)。

    沖縄タイムス(共同通信の世論調査)
  • 緊急事態条項への賛否は、「わからない」が38%で最多、「必要ない」が29%でした(毎日新聞、2026年5月)。

    毎日新聞 社説(8/25)

SNSの反応

改憲寄りの声

  • 改憲には両院の3分の2と国民投票が必要なんだから、権力者が勝手に変えられるわけじゃない。怖がりすぎだと思う

  • 毅然とした外交には防衛力の後ろ盾が必要。「軍事力=戦争」っていう決めつけは、そろそろやめない?

慎重・反対寄りの声

  • 緊急事態条項なんて要らない。参院の緊急集会や今の法律で足りるし、何より今の政権に憲法を変えられたくない

  • 憲法改正なんて頼んでない。それより物価高対策や、まともな外交をしてほしい

その他の声

  • 今の国民投票法はCMの規制もないし、本当に公正な投票ができるのか不安

  • 政府の広報予算が大きく増えるのは、改憲の国民投票に向けた地ならしじゃないかと心配

  • 自民党の昔の改憲草案は、拷問禁止の「絶対に」を削っていた。ああいうのを見ると怖くなる

集め方:X(旧Twitter)で「憲法改正 OR 改憲」(いいね50件以上・話題順)と、「必要」「賛成」「自衛隊」などを組み合わせた検索を行い、2026年9月中旬〜10月10日の日本語投稿 約40件を確認しました(反対の投稿が多かったため、賛成の声も意識して探しています)
無作為に抽出したものではなく、世論を代表するものではありません。
「共感」の数は当サイト読者の反応で、世論調査ではありません。1つの声につき1回押せて、もう一度押すと取り消せます。

③ ポイント整理

意見が一致している点

  • 大規模災害などの緊急時に、国会の機能をどう保つかを考えておく必要があること(その手段として憲法改正が必要かで対立)
  • 国民投票を公正に行うため、ネット広告や偽情報への対策が課題であること

意見が分かれている点

  • 緊急事態条項は必要か、それとも参院の緊急集会など今の仕組みで足りるのか
  • 内閣が法律と同じ効力を持つ「緊急政令」を認めるべきか
  • 9条をどうするか(自衛隊の明記か、2項の削除か、改正の必要はないのか)
  • 期限を区切って発議を急ぐべきか、時間をかけて議論すべきか

今後の注目点

  • 臨時国会で、憲法審査会に条文起草委員会が設置されるか
  • 9条をめぐる自民党と維新の溝が埋まるか
  • 参院で公明党・国民民主党・参政党がどう動くか
  • 2027年2月21日の自民党大会までに、首相が言う「発議のめど」が立つか

このテーマは、産経・読売新聞と自民・維新が改憲を後押しし、朝日・毎日・東京新聞と多くの野党が慎重・反対という、保守とリベラルの対立が比較的はっきりした構図です。ただし国民民主党や参政党のように、項目ごとに賛否が分かれる政党もあります。 実際に発議できるかは参院の議席次第で、今のところ3分の2には届いていません。まずは憲法審査会で条文づくりが始まるかどうかが、最初の分かれ目になりそうです。